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人生交換所~今、幸せ?~  作者: 静動ちゃん


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chapter1:杉﨑美緒の場合

この作品はフィクションであり、いかなる事象・団体とも関係はありません。また、特定の思想を賛美するものでもなにがしかを否定するものでもありません。

「はあ、また落ちたか。」


スマートフォンに届いた一通のメールを前にため息をつく。


大学三年生の冬、もういくつ目かも忘れてしまった不採用の通知。


また次の企業探さなきゃ。そう思って私はまたため息をついた。


就活を始めたのは三年生のGWあたり。やりたいことも分からないままとりあえず文系だからとコンサル業界だの金融業界だのを見て、とりあえずホワイトっぽい企業に夏期インターン行って。そして、あれよあれよという間に早期選考。


でもやりたいことが分からないからか面接はボロボロで夏期インターンの甲斐なく全落ち。


インターンに行かなかった企業も受けてみたけどやっぱりダメで。


今だってやりたいことは分かってない。文系に行ったのは数学ができなかったからで、進学したのは大学に行くのが当たり前って言われて育ってきたからで、今の大学のこの学科にいるのは自分の成績と家庭の経済状況を鑑みた結果だ。


こんな感じでも、やりたいこととやらを見つけるかよっぽど上手いこと取り繕うかしなきゃ生きていけない。


…無理だよほんと。


現実逃避にインスタを開く。リール投稿をぼんやりと眺めているとうっかり広告を押してしまった。


今流行りの悪役令嬢もののマンガ。


…いいよねえ、悪役令嬢は就活なんてしなくていいんだから。親か誰かの言われたとおりにするだけなんだから。


小中学校は学区で決まってたし、高校と大学は成績で決まっていたようなものだった。というか学校じゃ言われたとおりに出来る子が”良い子”で、”そうあるべき”ってなってた。考える必要なんてなかった。なのに今更…。


またため息をつきそうになったところで、しかしそれはあくびとなって出てきた。


あれ、なんか、眠…い…。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




目を開けるとそこは知らない部屋で、私は椅子に座らされていた。


「おー目が覚めたね。」


目の前に知らない人…いや、この間の面接官こんな感じじゃなかったっけ。


「おはよー、うん、君はけっこう起きるの早かったね、いや、そんなことないかな、どうだっけ?覚えてないから分かんないや!あは!」


その人物は私に構わずぺらぺらと喋る。


「…あの。」


「うーん?あっ、びっくりしてるんだね!うんうんそうに違いない、そうだね~、君は人生を変えることができるかもしれないおめでとう!ってことだけ分かってたらそれでいいよお。」


「は、はあ…。」


「君はあれだよね、もう人生決まっちゃってる感じが良いんだよね。それなら~…うん、丁度良い子いるよ!」


というとその人は突然いなくなった。


かと思えば次の瞬間には知らない女の子を連れて戻ってきた。あーでもなんかさっきの広告のマンガの主役の子そっくりかも。


「この子は、イルゼ・フォン・ローゼンベルク。まあ君がいいなーってなってた悪役令嬢ってやつ。」


イルゼ。さっきの悪役令嬢の名前。


「んで、この子は杉﨑美緒。君が憧れた物語に出てくる自由にお仕事も結婚相手も決められる女の子。」


そんないいもんでもない…っていうかほんとに此処は何?人生変えられる、みたいなこと言ってたけど…。


「あれ、不思議そうな顔してるね~、さっき説明しなかったけ、じゃあ言い方変えるかな、うーん、お悩み相談室じゃないしプレゼントショップ?いや、まあなんでもいいか!はーいじゃあとりあえず君たち人生交換しちゃおう!」


人生交換?どういうこと?私がイルゼになるとかそんなラノベ展開が起こるとか?いやまさか。


戸惑う私をよそにその人は話を続けていく。


「はい、じゃあね、美緒ちゃんは就職活動、まああれだ、お仕事探しをしてる学生ちゃん。それで、イルゼちゃんは貴族の娘。婚約者がいるんだけどあんまり上手くいってなさそうな感じ。まあ上手くいかなくてもパパがなんとかしてくれると思うけどね!」


マシンガントークはさらに続く。


「あそうだ、君たちのいる世界は同じ世界じゃないんだよねつまり異世界ライフってわけだ!まあ心配しないで、きっと楽しいよ~。」


え、本当に私がイルゼになるってこと?そんな都合の良いことが?


…でも、もし本当にそうなら。


就活から逃げられる?もう未来のこと考えなくてもいい?


それなら、なんだっていい。


「私、行きたいです!」


勢いよく言う。イルゼも


「いいわ。」


と言ってくれた。


やった、やったあ!


「いや~、あっさり決まったねめでたしめでたし!それでは良き人生を~!」


唐突に足の力が抜ける。


悲鳴さえもあげられない自由落下。身体と同期するように、意識が落ちていく――。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




目を覚ますと、知らない天井が目に飛び込んできた。


「お嬢様、起床のお時間でございます。」


ベッドから身体を起こして声のした方を見ればメイドさんっぽい人が扉を開けて部屋に入ってきた。


…ほんとに?ほんとに、交換しちゃった?


私は歓喜に震える。


「…お嬢様、どうかなさいましたか?」


起きてはいるもののなかなか身体を動かさない私にメイドさん――マイヤーという名前で呼ばれていることを何故か知っている――が訝しそうに声をかけてきた。


「なんでもないわ、ただ今日の予定について少し考えていただけよ。」


「婚約者様とお会いになりますものね。最近、婚約者様と親しくされている男爵令嬢がいらっしゃるとか。」


わー本当に流行り物のマンガの世界みたいだ。


「ええ…でも考えても仕方がないことね。もう私、修道女にでもなろうかしら。」


結婚するか修道院に行くか。もしかしたら断罪イベント後処刑とかもありえるかもしれないけどなんでもいい。


考えなくて良いなら、もうなんでもいいや。




そして、あっという間に二年半が過ぎた。


「結婚おめでとう。」


「ありがとうございます、お父様。」


今、私は幸せだ。


言われたとおりに振る舞い、言われたとおりに勉強した。成績はずば抜けて良かった。当たり前だ、言われた勉強をしておけば良いんだから。元の世界でもテストは得意だった。


それだけで人生はあっさり進んで、結婚した。


最初の婚約はダメになっちゃったけど、お父様が”優秀なお前に見合う相手を”と凄腕で有名な宰相の息子を婚約者として新たに見繕ってきてくれた。


あとは夫の仕事を手伝えばいい。


就活をしなくても食うに困らない。


ああ、なんて幸せ。


”杉﨑美緒の人生”、交換してもらって良かった!



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