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EP.6 あとは私に任せて──だから──おやすみ兄さん


世界は灰色に染まっていた。空気は重く、まるで死そのものが漂っているかのようだった。かつての建物は瓦礫と化し、原型を留めない廃墟が広がる。その中心に、ただ一人、少女が佇んでいた。彼女の姿は虚無を纏い、銀河のベールをまとったように儚く、孤独だった。長い髪が微かに揺れ、彼女の瞳は目の前の荒廃を静かに焼き付けていた。


「あーあ......まさかあっちの烈族が来るとは思わなかった」


少女は小さく呟き、ゆっくりと振り返った。そこには、この死に絶えた世界にそぐわない、異様な存在感を放つゲートが立っていた。空間を歪め、時間の流れすらねじ曲げる《空間異時層ホール》。その光沢ある輪郭は、まるでこの世界を嘲笑うかのように輝いていた。


「空間異時層ホール、厄介な人の技術だ。烈王と烈桜の仕業かな?それとも......"お前の仕業"?」


少女の声には、どこか挑発的な響きがあった。彼女がゲートを見つめていると、その中心が揺らぎ、闇の中から一つの影が現れた。現れると同時に、少女と目が合った。


「......烈滅か。もう見た光景、どうやらここも終わったみたい」


烈滅はニヤリと笑う


「その口ぶりだと、何度も見ているみたいだな?名前は?」


烈滅はその者に名を聞く。


「私はルイナ。もう分かるでしょ?」


彼女の名を聞き、烈滅の視線がルイナの腰に下がった。そこには五つの刀の鞘が揺れている。どれも異様な雰囲気を放ち、ただの装飾品ではないことを物語っていた。


「なるほど、ということはその腰にぶら下げている刀の鞘は奴らのか?」


ルイナは小さく笑い、首を振った。


「貴方が知ってる烈族とは違うけどね...それにコレは彼がくれたもの。私が手に入れた訳ではないよ」


「ふーむ、カイナか──そっちの私が創った世界でお前たち兄妹は烈王と烈偽と戦っていたが、その途中でどうやら邪魔が入ったのだろう?」


ルイナの表情が一瞬、凍りついた。彼女は静かに頷き、言葉を続けた。


「全部、というよりある程度は列玥の力で見たのね?世界を超えて起こる事を見えるなんて便利な力......まぁもう死んでるみたいだけど」


「ああ、列玥だけじゃない、残念ながらこの世界の烈族はここにいる私、烈滅だけだ。はぁ、で目的は?見ての通りこの世界は助からない」


「そんな事は知ってる、貴方こそ見て分からないの?この鞘、烈族で出来ている、というより烈族そのものだから。それを万象書(クオリティコード)で刀の鞘にしてるの。使おうと頭の中で想像すればすぐに見えない刀も使うことが出来るよ」


ルイナの腰にぶら下がる鞘には、確かに刀の姿はなかった。だが、彼女の言葉通り、それは「見えない」だけで存在しているのだ。烈滅は眉をひそめ、考え込むように顎に手をやった。


「なるほど......その刀になった同胞と同じ運命を辿れ。という事だな?だがその5体は意識は完全に無くなっている。だが私はそんな雑魚どもとは違うぞ?うるさくなるかもしれないぞ?」


ルイナはくすりと笑い、軽く首を振った。


「そんなしょうもない脅ししか出来ない時点で貴方も手が尽きてるね。ほら、早く」


烈滅は舌打ちしたが、その目にはどこか諦めたような光があった。


「愚かな妹だな、兄のカイナとは大違いだ。アイツは私を使おうとはせず、殺そうとしたのだからな。アイツは正しい、だがお前は「早く」...はぁ」


烈滅の長い愚痴を、ルイナは静かに遮った。彼女は手を差し出し、烈滅はその手に自分の手を重ねた。その瞬間、烈滅の身体が黒い光に包まれた。光が収まると、ルイナの手には新たな刀と鞘が生まれていた。禍々しい色合いを放つその刀を、彼女は静かに腰に下げた。


『コレからどうするんだ?』


ルイナは足を止め、わずかに微笑んだ。


「本当に意識があるんだ。しぶといね」


『ふん、雑魚どもとは格が違うからな。まぁ、時間の問題かもしれないが──もって500年だろう』


ルイナは小さく笑い、答えた。


「私からしたら一生だね。丁度よかったよ...寂しさを紛らわせれるから」


烈滅の声が再び響く。


『カイナはどうした?烈玥で見えた光景はカイナとお前の姿だったぞ?』


ルイナの表情が一瞬、曇った。彼女は静かに、しかしはっきりと答えた。


「知ってるくせに、よく言うよ......カイナは烈王と烈偽との戦いの途中で邪魔をしてきた奴から私を庇って死んだよ」


『あのカイナが、やられるとは想像しているより、厄介だな......あてはあるのか?』


「いく座標は定めてる。今回は貴方を回収しに寄り道しただけ。コレから行く所が本命」


ルイナは空間異時層ホール(ゲート)の前で唱える


「我が身体に宿し万物核(アカシックレコード)よ、眠りし予言を照らしたまえ」


ホールはみるみる内に色が変わり、そしてホールを通してその先の光景が微かだが、見える。


『なんだその詠唱は?カッコよさが無いな』


「詠唱なんて所詮、飾りと同じ。詠唱そのものには意味なんてないわ。ところでここ、分かる?」


ホールの先の光景を指差してレイナが烈滅に聞く


『......まぁ行ってみたら分かるだろう。それに随分、私好みの所ではないか。似ている、私が創り出した世界と』


「この先は万物核(アカシックレコード)を使って、烈玥が見た予言を現している。となるときっとこの先にあらゆる世界を渡り、宇宙さえも超えて悪さをしてるただただ面倒くさい烈族がいるわ」


『私の存在が勘付かれないのを祈れ。勘付かれたら烈王が直接来るかもしれないからな...まぁ、来たところでこの私が、どの烈族の中でも最強だ』


「貴方は随分と自分を高く見てるのね。こっちの烈滅はとても寂しそうで静かだったから」


そう言いながら、ルイナはゲートの中へと踏み出した。灰色の世界は、彼女の背後に静かに消え、まるで最初から何も存在しなかったかのように、完全な静寂に包まれた。



重要人物を投下

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