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第七話 彼ピ疑われててMK5

 どうも、夢果実と書いてめろんです。気づいたらゲーム内のヒロイン、アルプス・ローレンスになっていました。この世界にはもう一人私と同じ転生者がいます。


「なに見てんのよ、ちゃんと前向いて歩かないとぶつかるわよ」


 こちら、アルプスの義姉で敵のサラ・イチマンジャクに転生した真良々《まらら》ちゃんです。彼女はこの世界に私たちを連れて来た怪しい者がいると言い張り、私をこき使うガチラスボス。うーん、目つきで三人は殺せそう。ちなみに私もその中の一人。



“裏で私達を操ってる者がいるかもしれない。この国のどこかに”


 サラにそう言われて、あれから私達は王宮内の怪しい者を手分けして探すようになった。

しかし私がそんなめんどーな事をするワケもなく。すぐにやめた。サラとの三日に一度のお茶会ではちゃんとやってますよアピをし、サラの新たな発見を長々と聞かされる。


 クッキーを食べるのに必死でよく聞いていなかったが、サラは怪しいものを見つけられず、王宮の外に行こうとしてるらしい。私も行きたい気もするが、王たちにバレて怒られたり、縁を切られたりしたら溜まったもんじゃない。


 変装したサラを使用人用の出入り口で見送った。しかしサラは案外早く部屋に戻って来て「やっぱり王宮内だわ」とため息とともに言った。

 理由を聞こうとしたが、長くなりそうな感じだったのでやめといた。



「ああ! 巻いたとしか思えない天然のカールが歩くたびに揺れている! 深緑の目はカラーダイヤのようだ! なんとお美しい! あぁ! アルプス・ローレンス様ぁぁ!」


 今日は久しぶりに私の婚約者の一人、ポツダムとのお茶会だ。

 私はさっきから一度も動いてないが、彼の目には歩くアルプスが映っているのだろう。きっと。

 サラとの任務で彼には長らく会えていなかったが、実は今日もサラとの任務でポツダムが怪しいかどうかを確かめているのだ。私的にはポツダムは転生してるワケでもなさそうだし怪しい所はないが、サラから見れば怪しいらしい。


「ねえねえ、ポツダム」

「ファァァァイッッ! なんですか? アルプス姫?」


 彼に怪しい所はない。ただ返事がキモいだけで。


「私、王宮から出たいな~」


 私は彼の手を両手で握り、上目遣いで顔に近づける。

 さあ、ポツダムの反応は……?


「王宮から……出る? それってつまり、この私と街でお忍びデートがしたいとっ!?」


 ポツダムは違う方向に行っている。まあこの反応だとシロだろ。


「あ、いや、庭園に行こうってこと。ねっ、今から薔薇のブランコしに行こ!」



「ってな感じでやっぱりポツダムはシロだったよ、あんたのほうは?」

「そうね、ガラパコスはは掴めなかったわ。ロッキーは違うみたい。今のところポツダムが一番怪しいわ」

「はあ!? 今言ったでしょ? ポツダムはシロだって!」

「そう? 聞いた感じだと、無理に話を逸らしてるヤバイやつよ?」


 それはそうだけど。


「テンションもおかしいし、転生者ってことも視野に……」

「ちょちょちょ、ちょっと待って!?」

「何よ、アルプス」

「ポツダムが転生者なわけない! 彼は私の事が好きすぎるだけど、怪しくないんだってば!」


 サラは怪訝な顔をする。


「そこよ、なんでアルプスの事がそんなに好きなの? 怪しすぎるわ」


 ……あ、そっか。サラはこの世界がゲームの中ってことも、私が主人公ってことも、ポツダムが攻略対象ってことも知らない。だから怪しく思うんだ。

 ポツダムが私の事好きなのはゲームの設定だし、どうにかしてポツダムのイメージ払拭をしなきゃ。


「ところであんたが担当した二人は? 本当に怪しくないの?」


 とりあえず話を逸らそう。前会ったガラパコスはサイコ野郎だし、そっちに狙いを変えられるかも。


「どうかしら。私は直接話さず、彼らの会話を聞いていただけだから……。当たり障りのない話ばっかりだし、特にこれといったことはないからシロね」

「は……? 直接話してないの?」

「ええ。何かダメだったかしら? 彼らとサラは仲が良くないかもだし……」

「大問題よ! ガラパコスはサイコで、ロッキーあんたのことが好きなのよ!?」

「ふーん。そうなの」

「えっ、軽っ! サイコパスとあんた想いよ!? 疑う要素モリモリでしょ!」


 私はソファから立ち上がり、サラを怒鳴る。しかしサラは表情一つ変えない。


「もう一度言うわ。彼らの話を聞いていたけど、当たり障りのない話だったし、特にこれといったことはなかった」


 サラは冷静に続けた。


「彼らはシロよ」


 私はイラっとなりサラの腕を掴む。


「当たり障りのない話って何!? おしえてくんなきゃ分かんない!」


 サラは私の腕を振りほどきながら笑顔を作る。


「あなたが理解できないような政治の話だったり、食器のブランドの話だったり、服のサイズの話よ。一人一人の話も聞いてみたし、昨日あなたがポツダムと馬鹿みたいに庭園にいるときも、私は二人の後を追って気づかれないように必死に聞き耳を立てていたわ。これ以上なんかある?」


 私は言葉に詰まる。


「ポツダムに会いに行くわ」


 サラは静かにそう言って部屋を出た。

次回 第八話 ヤツがクロなまさかのワケ

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