第五話 なんていうか、スパイ?
「ああ! アルプス様は今日も美しい! 国の宝だ!」
彼の名はポツダム・センゲン。彼は私に会うとこうして愛の言葉を贈ってくれる。少しうるさいけど、褒められて悪い気はしない。
「ありがとう、座って」
私はソファに腰掛けて自分の隣を指差す。ポツダムは犬の如く素早く来た。
今日はポツダムを私のお茶会に誘った。聞きたいことがあるのだ。
「ポツダム」
「はい、なんですか?」
彼はクッキーを食べる手を止めて私を見る。
私は大きく息を吸う。
「そーしてえか、がやーく……?」
ポツダムの反応次第で転生者かどうか分かる。私はポツダムを見る。
彼は困惑していた。何をどう答えれば良いのかと。
彼は転生していない、ゲームのキャラだ。
私はその後、他の婚約者2人ともポツダム同様に探りを入れたが、2人とも反応しなかった。
つまり、私とサラだけが転生者だ。
うーん、サラに抵抗するための戦力が欲しかったんだけどなあ。私1人で戦うしか。
ちなみにこの方法を廊下で偶然会ったサラに仕掛けてみたらまんまと引っかかり「ウルトラソウル!」と叫んでいた。あのサラの恥じる顔、うーん。忘れられない。
私は庭園のブランコから降りて部屋に戻る。最近はしょっちゅうあのブランコに乗る。少し落ちつのだ。
部屋の前まで行くと扉の前でメイド達が慌てていた。
「ねえ、何かあったの?」
私がドアに手をかけるとメイドが耳元で言った。
「それが…」
ガチャッ
「あら、ごきげんよう」
私の部屋にはサラがいた。我が物顔でソファに座っている。
「はあ!?」
私がメイド達を睨むと彼女らは強張り「サラ様が急に押しかけてきて……」と説明し出す。
「もういい、早くサラを追い出して……」
「アルプス、話があるの。2人だけで」
サラは得意の悪女顔でメイドを追い出した。
次回 第六話 彼女のすべて