第四話 地獄の夕食会
「アルプス様、こちらのドレスはいかがでしょう」
「うーん、もっと派手なのはないわけ?」
「ではこちらはどうですか?」
「いーよ、それで」
今夜は王と王妃とサラとの夕食の日。サラの協力を断ったあとに会うのは気まずいケド、恒例だからしょーがない。
「いただきます」
サラは食事が始まる前、手を合わせる。王も王妃も慣れたのか、何も言わずに食事を始める。私はサラを一瞥してフォークを取ってステーキ横のにんじんを食べる。
見た目はカボチャだけどにんじんの味がするのでにんじんと言っている。
「サラ、今はなんの研究をしているんだ?」
王が聞く。サラはナプキンで口を拭いて上品に微笑んだ。
「ひみつです」
……は? 何コイツ。うざっ。
「そうか…」
王は表情を変えずに言った。私の食器とカトラリーが当たり合う音だけが響く。
毎回これ。
話す内容は特にないし、あったとしてもすぐに会話が止まる。今日の場合はサラが100%悪い。
私としては家族のような食事を期待していたが程遠い。
まず私、アルプスは養女だし。ゲームでも王たちと仲良くしてた感じはない。元からだろうか。でもゲームでもサラが一方的にアルプスをいじめていた。しかしそのサラは別人になって、静かに食事をしている。
こんなんだったら悪役ムーブの方が100倍はマシ!!
王も王妃もどことなくフワフワしていて掴めない。
王はサラと似た色合いの髪と目。目つきは悪いけど、これまでいじめられたりはされていない。でも私の事を良く思っていないのは伝わる。
王妃は茶髪で優しそうに見えるが、私とお茶会を開いたことはない。サラとは週一で茶しばいてるくせに! まあ実子のほうが好きなのは普通。
一度、私からたくさん話をして夕食を過ごしたことがある。
その時、私は庭園の話や、お菓子の話をした。当たり障りのない会話のはずが、王と王妃には少しも刺さらなかった。サラに至っては目線で「諦めろ」と語っていた。私はただ楽しい食事にしたいだけなのに。王たちは私を無視して食事を終えた。次の夕食には呼ばれないと思ったが、このように続いている。
「ごちそうさまでした」
サラは手を合わせて食事を終えた。私も食べ終わる。
「ではお父様お母様、失礼させていただきます」
「あ、私も」
私たちは私たちを見向きもしない王と王妃を残して廊下に出る。サラと私の部屋は同じ階にあるので途中まで一緒に歩く。少し気まずい沈黙。
私は口を開く。
「前言っていた“どこかおかしい”って何?」
サラは足を止めた。
「あなた、協力はしない、とはっきり言ったわよね? もしかして考えなおしてくれたの?」
どことなく嬉しそうなサラに私は首を振る。
「ちがう。気になっただけ」
サラは「そう」と言って廊下を歩く。私の質問には答えてくれなかった。
次回 なんていうか、スパイ?