第十二話 推定有罪。ギャル的にはそっちが正義
「国外追放、幽閉、どっちがいいかしら?」
「え……?」
「だから、彼が本当にキケンな存在ならこの国に居させないほうがいいわ。もし王様に何かあったら……。今すぐにでも王たちの場所を吐かせて、牢屋に入れるべき」
「え……たしかに」
ってことで、ポツダムを地下牢に入れました。
「え? は? どういうことだよ!」
ポツダムは意味が分からないのか、しらばっくれているのか、どっちにしろ名演技で格子を壊そうと必死だ。
「観念なさい! この牢屋は国の重罪犯を捕まえるための物よ! 簡単に壊れやしない……」
「アルプス、まだ鍵掛かってないからあまり刺激しないで」
「え?」
サラの一言で状況は一変する。
「本当だ、脱獄できる」
アルバータに協力してもらってやっとの思いで牢に入れたポツダムは一瞬にして私の隣に来た。
「なぜ私を牢に入れるのですか? アルプス様」
彼のサファイヤのような目は見たことないくらい怒っている。
「え、えーっと」
「ちょ、何してるよの! 来て、アルバータ!」
鍵を見つけたサラが奥の部屋から出てくる。地上と繋がる階段前で待機していたアルバータが急いでポツダムを取り押さえ、ポツダムはまた牢屋に入れられた。サラがカギをかける。
「はあ~これで安心ね。悪霊退散」
「悪はどっちだよ、急にこんなことしやがって」
サラの安堵のため息にポツダムは思うことがあったのかボソボソツッコむ。
彼はまだ状況が理解できていないようだ。
「ねえ、あんた」
私はしゃがんでポツダムと目線を合わせる。
「私のこと好き?」
場が凍る。
「は、はあ? 何聞いてんのよ! あなた! い、今?」
サラが割り込んで私の肩を叩く。
別に私とてこんな最悪な状況で公開プロポーズがしたいわけじゃない。
ただ確かめたいのだ。ゲームの攻略対象で私のことが大大大好きなポツダムが、この状況でどう答えるのか。まだ私を好きなのか。
どう答えられたらキャラ、とかわかんないケド。
私はサラを無視してポツダムを見つめる。彼は困ったように眉を下げるも、少し赤面していた。
「そりゃ、好きです」
え。
「え」
え?
「ええ?」
これはどっち!?
いつものクソうるさいテンションで来るかと思った。まさか、こんなに真剣(?)ぽく言われるわけないから予想外で……。
「クソかっこいいわね」
「サラ!?」
彼女が言うほど破壊力やばすぎ。危険物質はなってるだろ、さすが王道ルート。
「あの……ひめさま」
アルバータが気まずそうに階段を指差す。
「そ、そうね、もう帰りましょう」
サラとアルバータにエスコートしてもらい、まあまあ急な階段を上がる。
「いやこの状況で俺置いて行かれることある?」
アルバータは後輩の練習に付き合うらしく、サラと私だけでポツダムの部屋に来た。
「どう? 怪しいものはない? たとえば王関連の物」
「特にないけど、あ!」
棚を探っていたら私の18金のダイヤメモが見つかった。
「なによそれ」
「スパイの時ポツダムにお願いしたの。夢だったんだー“18金のダイヤ”」
「ぷっ」
サラが噴き出す。
「なんで今笑った!? たしかにあいつを牢屋に入れちゃったからもう叶わないケド」
「ちがうわ、あなた、ダイヤが欲しいのよね?」
「……? うん」
「ダイヤはカラットって数えるのよ。18金って……金じゃない、それ」
サラは笑いを抑えきれず床に座り込む。
「もー! 知らなかったんだもん! からかわないでよ!」
「ふふ、いいじゃない。面白いもん」
私はバカにされた気しかしなく、ベッドに横になる。
「ふてくされないでよ」
サラも隣に腰かける。
「もし元の世界に帰れたら私のダイヤの指輪を見せてあげる」
「えっほんと!?」
「……あげるんじゃないからね?」
「わかってるよ!!」
次回 第十三話 あれ?牢屋の人が紅茶飲んでる




