表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『転生違法世界 〜俺、バレたら即死です〜』  作者: 甲斐悠人
第九章【平穏な日常…。】
89/139

第9章77【騒がしき日常と、迷い猫騒動】

予定どうり日常回をこれからも書き続けます!

春の陽気が村を包み込み、かおるたちの暮らしはますます落ち着いたものとなっていた。


 村の広場では、市場が開かれ、人々が笑顔で声を交わしながら、新鮮な野菜や焼きたてのパンを売り買いしていた。

 そんな中、かおるは荷物持ちとしてアリシアの買い物に付き添っていた。


 「トマトと……あとはミルク。あと何か欲しいのある?」

 アリシアが買い物袋を覗き込みながら聞く。


 「俺はもう十分。っていうか、この量、俺が運ぶんだよな?」

 かおるが肩をすくめると、アリシアはくすりと笑った。


 「当然じゃない。ほら、力持ちなんだから」


 そんな軽口を交わしていると――。


 「きゃああああっ! ね、猫がぁあああっ!」

 市場の一角で、叫び声が響いた。


 かおるたちはその声に反応し、すぐに現場に駆けつけた。

 そこには、老婆が転びかけているのを支えるセラの姿があった。


 「どうした?」

 かおるが尋ねると、セラはやや興奮した様子で言った。


 「猫が……すっごい速さで飛び出して、野菜をぐちゃぐちゃにして逃げていったの! あの猫、ただの猫じゃない!」


 「……魔獣ってことか?」

 かおるが警戒するが、老婆が震える声で言った。


 「い、いや……確かに猫なんだけど……どこか変なの。目が金色に光ってて……」


 その話を聞いたアリシアがぽつりと呟いた。

 「もしかして……妖精猫かもしれない」


 「妖精猫?」

 かおるが首を傾げる。


 「古い文献で見たことがあるの。人の感情に反応して姿を変える猫で、魔法的な能力も持ってるって」


 「つまり……そいつが村に紛れ込んだってことか」

 かおるは腕を組んで考え込む。


 「このまま放っておくと、被害が広がるかも」

 アリシアが真剣な表情で言うと、セラが拳を握って言った。


 「だったら、私たちで捕まえようよ! ね、かおる!」


 「……了解。どうせ、放っておいても騒動になるだけだしな」

 かおるはため息をつきながらも、すでに行動を開始していた。


 こうして、思わぬかたちで始まった「妖精猫捕獲作戦」。

 三人はそれぞれに役割を決めて、市場の周辺や家屋の隙間、森のふちまでを調べて回った。


 だが、猫は姿を見せてはすぐに消える。

 何度か見かけても、金色の目だけが印象的で、あとはただの可愛らしい黒猫の姿だった。


 「はぁ……ほんとにただの猫なんじゃないのか?」

 かおるが木陰に座り込むと、セラが首を振った。


 「違うよ。さっき私の目の前で空中に浮いたんだから!」


 「その証拠、見たのセラだけだぞ……」

 かおるが呆れると、アリシアが地面に落ちていた奇妙な足跡を指さした。


 「でも見て。猫の足跡だけど、途中でいきなり消えてる。これは普通じゃない」


 結局、猫の正体は掴めないまま、日も暮れ始めた。

 三人は一度家に戻り、夕食を囲むことになった。


 「今日の夕食は私が作るわ。ちょっと冒険したレシピだけど、楽しみにしててね」

 アリシアが笑顔で台所に立つと、セラはさっそく食器を並べ始めた。


 かおるは窓の外をぼんやりと眺めながら、思う。

 騒がしいけれど、こういう日々も悪くない――

 敵がいない、争いもない。

 仲間たちと笑い、食卓を囲む時間こそ、本当の意味での「救い」なのかもしれないと。


 ……そして夜。

 その静寂の中、窓の外に一匹の黒猫が現れた。


 金色の瞳が、じっと家の中を見つめていた。

 かおると目が合った瞬間、その猫はふっと消えた。


 「……やっぱり、お前、普通じゃないな」


 その呟きに答えるものはなかったが、かおるの中には確信が芽生え始めていた。

 この猫は、何かを伝えたがっている――



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あとがき: 読んでくださってる皆さまありがとうございます!書籍化目指して頑張るぞ!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ