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『転生違法世界 〜俺、バレたら即死です〜』  作者: 甲斐悠人
第八章【背徳の王都、告発者たちの影】
87/139

第8章75【原初の塔へ、記憶の牢獄】

これで、完結…。じゃあありません!次の話から日常が始まる予定です!

(3/5)

【塔内突入〜クラウスとの対峙】


 激闘の末、人形兵たちを打ち倒した三人は、“原初の塔”の内へと踏み込んだ。


 中は、まるで時の止まった神殿のようだった。

 壁一面に流れる“記憶の光”。それぞれの帯が、誰かの人生を映し出していた。


 「これ……まさか全部、転生者たちの記録?」


 「ええ。魂の“写し”。思考、記憶、感情……すべてを複製するための装置」


 「こんな狂った場所を、人間の手で作ったのかよ……」


 かおるは拳を震わせながら、先へ進む。

 その奥、ひときわ異質な空間が広がっていた。


 玉座。天井まで伸びる水晶柱。

 そして、その中心に座っていたのは――


 「待っていたよ。かおる」

 クラウス・ヴァインベルグ、その本体だった。


 「お前が……すべての元凶か」

 かおるが剣を抜く。


 「いや、私は“道を用意した”だけだ。選んだのはお前たちだよ」


 クラウスは立ち上がり、手を広げた。


 「私が見たいのは、世界の“終点”だ。転生が破綻し、記憶が塗り潰され、魂が解放される瞬間。そのためには、“君たち”が必要だった」


 「ふざけるなッ!」


 かおるが突き出した瞬間、空間が歪んだ。


 クラウスの周囲が、巨大な魔法陣で覆われる。


 「来るがいい、“原初”の力をまとった英雄よ。君の怒りを、世界に刻んでみせろ」


 「アリシア、セラ、いくぞッ!」



---



(4/5)

【クラウスとの最終戦闘・カナメとの接触】


 塔の中心部、空間は歪み、重力が乱れる。

 クラウスの放つ魔術は、既にこの世界の理を超越していた。


 「これは……魔術じゃない。概念そのものを操ってるの……?」

 セラが驚愕する。


 「さすが“原初の塔”に適応した男だ。だけど俺たちだって――!」

 かおるの剣が閃き、時空を裂くようにクラウスへと迫る。


 「貴様の理屈で、俺たちの絆を踏みにじるなッ!」


 同時に、アリシアの風が炸裂し、セラの炎が天井を焦がした。三者三様の力が、クラウスを追い詰めていく。


 ――しかし。


 「甘いな」

 クラウスが静かに呟くと、彼の身体が霧のように分散した。


 「これは“記録”だ。私の真なる核は……“記憶の牢獄”の中にある」


 次の瞬間、かおるの視界が白く染まる。



---


 彼が目を覚ました場所は、何もない虚空。

 ただ一人、少年が立っていた。


 「カナメ……!」


 かおるが駆け寄ると、カナメは振り返る。


 「やっと……来てくれたな」


 彼の瞳には疲労と悲しみ、そして微かな希望があった。


 「ここは……俺の記憶。あいつ、クラウスは俺の魂を“媒体”にして、塔を制御してる」


 「助ける。絶対に連れ戻す」


 カナメは首を横に振る。


 「俺はもう……戻れない。魂が分散しすぎた。でも、かおる……一つ、お願いがある」


 「……何でも言え」


 カナメは微笑んだ。


 「“この世界”を救ってくれ。お前にしかできない。“転生違法”の存在として、終わりを変えられるのは、唯一……お前だけだ」



---


 その言葉と共に、かおるの身体は光に包まれ――意識が現実へ戻る。


 目を開けると、アリシアとセラが必死に叫んでいた。


 「かおるっ!!」


 「目覚めて……!」


 そして彼は、クラウスの核心部――〈記録核〉へと最後の一撃を放つ。


 「カナメの願い、受け取ったッ!」


 閃光。

 塔が崩れ、空が裂ける。



---


(5/5)

【世界の決着、そして再会】


 クラウスの〈記録核〉が破壊され、世界に静寂が訪れる。


 塔の崩壊と共に、“転生記録網”が解放された。

 転生者たちの魂は、天へ還り、あるべき輪廻へと導かれていく。


 その光景を、かおるは黙って見届けていた。

 「……カナメ。俺は、やったぞ」


 瓦礫の上、アリシアとセラがゆっくりと近づいてくる。

 互いに傷だらけで、服は破れ、顔には煤が付いていた。


 「ほんと……無茶ばっかり」

 アリシアがぽつりと呟くと、かおるは苦笑した。


 「無茶しないと、勝てない相手だったからな」


 すると、セラがぽつりと口を開く。


 「――私、やっとわかった気がする。かおるの“原点”が……カナメって人との、絆だったんだね」


 「……ああ」


 セラは静かに頷いたあと、少し俯いて呟いた。


 「でも、今のあなたには……私たちがいる」


 その言葉に、かおるは目を見開く。

 アリシアも、微笑んで手を差し伸べてきた。


 「これからは一緒に、ね? 世界を少しずつ――良くしていこう」


 かおるは、ゆっくりと頷く。


 「……ああ。二人がいれば、どんな未来だって恐くない」


 手を取り合い、三人は崩壊する塔を背に歩き出す。

 世界が静かに、新たな夜明けを迎えようとしていた。



---


エピローグ「星の夜、三人で」


 数週間後――


 世界は激変の兆しを見せていた。

 “転生違法”という禁忌は消滅し、人々は新たな倫理と対話に向かって歩き出していた。


 そして今夜、かおるたちは小高い丘に登っていた。


 「星、綺麗だね」

 アリシアが夜空を見上げながら言う。


 「……静か、すぎて怖いくらい」

 セラもそっと肩を寄せてきた。


 かおるは二人の手を握りながら、優しく微笑んだ。


 「この静けさを……守っていこう。俺たち三人で」


 彼の言葉に、ふたつの頷きが重なる。


 ――かおるの旅は、終わったのではない。

 ようやく、“始まった”のだ。


 記憶に刻まれた無数の別れと、後悔と、祈りを抱きながら。

 彼は、未来を生きる。




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あとがき: 読んでくださってる皆さまありがとうございます!書籍化目指して頑張るぞ!
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