第8章75【原初の塔へ、記憶の牢獄】(中編)
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【導入・移動・情報編】
“原初の塔”――それは、あらゆる魔術の源であり、魂の循環すら司ると言われる場所。地図にも載らず、国家にも知られず、ただ〈白塔連盟〉の幹部のみに許された領域。
「塔は、転生法そのものを支える根幹よ。そこを壊すことは……世界の法則に爪を立てることと同じ」
セラが静かに言う。
アリシアが眉をひそめる。
「でも、その中に……カナメの意識が封じられてるんだよね?」
「……間違いないわ」セラは頷いた。「彼が送ってきた信号は、塔の座標領域からだった。そこにあるのは、“原初の記録層”。魂と記憶の眠る、最深部」
目的地が定まった今、かおるたちは山を越え、国境を抜け、白塔連盟の旧遺跡群が点在する北東の禁域――“灰の野”へ向かっていた。
荒れ果てた土地は、魔素の濃度が異常に高く、空すら霞んで見える。普通の旅人であれば数日で命を落とす場所だ。
だが――
「なんか、妙に静かすぎない?」
アリシアが不安げに辺りを見渡す。
「おそらく……歓迎されてるんだろうな。クラウスにな」
かおるの声が低くなる。
空気は沈み、風は凍てつくように冷たい。森の木々は枯れ果て、地表には意味不明な紋様が刻まれていた。
「転生陣……?」
「いや、これは“魂の回収装置”だ」セラが呟く。「彼らは、死者をただの燃料にしてる。これが……白塔連盟のやり方」
かおるは無言で拳を握る。
胸にある“カナメの残響”が、淡く震えていた。
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【原初の塔・外郭〜防衛機構との戦闘】
そして、ついに――
霧の奥に、そびえ立つ巨大な建造物が姿を現す。
白く輝く、無数の環が絡み合うような構造。建築というより“結晶”に近い。
「……あれが、“原初の塔”」
かおるは足を止め、剣の柄に手を添えた。
「セラ、アリシア。気を引き締めて行くぞ」
塔の入り口は開かれていた。まるで彼らを誘うように。
だが、その瞬間――
《侵入者確認。プロトコル72発動》
無機質な声と共に、地面から光の柱が立ち上がる。そこから生まれたのは、白銀の“人形兵”たち。
「……自動防衛魔装か。旧時代の遺産ね」セラが冷静に言う。
「数は!? ざっと二十体……全部、上級魔導機?」
「囲まれたね。でも……やるしかない!」
かおるが剣を抜く。
アリシアが風をまとい、セラが虚空に呪式を描いた。
「――全力で突破するぞッ!!」
(続きます)→【3/5:塔内突入〜クラウスとの対峙】へ