第8章75【原初の塔へ、記憶の牢獄】【冒頭:記憶の残響】
白い月が空に浮かぶ、深夜の森。
焚き火の灯りに照らされながら、かおるはひとり座っていた。
眠っているアリシアとセラの寝顔を見守りつつ、胸元の紋章を握りしめる。
――カナメの声は、確かに届いた。
「俺は……生きてる……」
その微かな残響が、何度も頭の中で再生される。
「クラウス……お前は一体、何をした……?」
かおるは天を仰ぎ、夜風に揺れる焚き火の音に耳を澄ませる。
セラの言葉が脳裏をよぎる。
「“原初の塔”……そこがすべての記憶と魔術の源よ」
塔。世界の理を司る“中心”。
白塔連盟の最高機密。転生者たちの魂と記憶を保存する“記憶の牢獄”。
カナメの意識が封じられているとすれば、間違いなくそこだ。
「行こう。あの塔に、すべてを壊しに行く」
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【翌朝:旅立ち】
陽光が差し込む中、アリシアが目を覚ます。
「かおる……眠れなかったの?」
「いや、ちょっと考えてただけさ。準備はいいか?」
「もちろん! セラ、起きてーっ!」
セラは寝ぼけ眼で起き上がり、柔らかく笑った。
「ふふ……久しぶりに、“死地”へ向かう気分ね」
かおるは背中の剣を握り、強く頷いた。
「“原初の塔”をぶっ壊して、カナメを連れ戻す。それだけだ」
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