第1章8【夜の野営地と、言えない気持ち】
8話です!みてねー
護衛任務を終えた俺たちは、翌朝まで谷の外れに野営することになった。
ジークは「見張り交代制」と言い残し、さっさと眠りについた。
「火、任せてくれていいから」
アリシアがそう言って、焚き火の薪をくべる。
パチパチと静かに爆ぜる音が、やけに耳に残った。
クロエは少し離れた岩の上で仮眠中。
──今、ここには俺とアリシアの二人だけだ。
「……あのとき、庇ってくれたでしょ」
「ん?」
「今日の戦闘。あれ、ちょっと無茶だったよ」
アリシアの声は、焚き火にかき消されそうなほど小さかった。
「そうかもな。でも……君が撃たれるより、マシだと思った」
そう返すと、彼女は黙ったまま、少しだけ視線を落とした。
「……こういうの、初めてじゃないんだ。仲間を失うって」
「……」
「だから、私は誰かが無茶するの、怖いんだよ」
そう言って、彼女は焚き火をじっと見つめたままだった。
「……ごめん」
「謝らなくていい。ただ……」
アリシアは、ぽつりと呟いた。
「私は、あんたが無事だったから、少しホッとしてる。それだけ」
言葉の最後は、ちょっとだけ震えていた。
そして──それきり、何も言わなかった。
その夜、俺たちは何もなかったかのように交代して、眠りについた。
でも、アリシアのその一言は、ずっと俺の胸に残っていた。