第8章69【白銀の戦士の正体】
戦いが続いていた。かおるは息を切らしながら周囲を見回す。彼の前に立つ魔物たちは、次々と攻撃を仕掛けてくるが、その全てをかおるは防ぎ、返り討ちにしていた。周囲に飛び散る魔力の波動が、戦場を一層荒廃させていく。
「くっ… こいつら、強すぎる…!」
かおるはそうつぶやき、再び魔物に向かって突進する。しかし、次の瞬間、予想もしない方向から光が差し込むのを感じた。振り返ると、白銀の鎧を身にまとった戦士が、戦場に現れていた。
その姿はまるで神々しい存在で、周囲の魔物たちが一斉にその戦士を見つめ、戦慄する。戦士は静かに歩を進め、片手に持った長槍を軽々と振りかざす。瞬く間に、魔物たちはその威圧的な力に押しつぶされるように、次々と倒れていった。
「お前…一体誰だ?」
かおるが声をかけると、戦士はその顔を覆っていた兜を外し、素顔を見せた。その顔は、かおるが今まで見たことがないほど美しく、またどこか冷徹で厳かなものを感じさせた。
「私の名前はリリア・ヴァルデン。あなたの役に立つために、ここに来た。」
その声は冷静で落ち着いていたが、どこか厳しい響きがあった。リリアはすぐにかおるに近づき、目の前の魔物たちを一掃していった。
「あなたが戦っているのは、ただの魔物ではない。これらは、ある種の罠として送られてきたもの。私が到着するまで、耐えていてくれ。」
かおるはその言葉に驚き、リリアに対する警戒心が一気に強くなる。彼女はあまりにも強力で、その存在がかおるにとって予測不可能なものに感じられた。
「罠? 一体何が…?」
リリアは短く答える。
「後で説明する。まずは、今の戦いを終わらせることが先だ。」
その言葉と同時に、リリアは槍を巧みに使い、周囲の魔物たちを次々に倒していった。かおるもその動きを見て、少しずつ息を整えながら彼女に続く。彼女の戦闘技術は圧巻で、かおるが一瞬で動きを見失うほどの速さと精度を誇っていた。
戦場に落ち着きが戻ったとき、かおるは再びリリアに話しかけた。
「さっき言ってた罠って…?」
リリアは短く答える。
「その魔物たちは、あなたを試すために送り込まれたもの。少なくとも、あなたの力を測るために。」
かおるはその言葉に疑念を抱くが、すぐに冷静になった。どうしてこんなことを言う人物が現れたのか、気になるところだが、今は目の前の事実に集中する必要があった。
「お前、どうして俺を試す必要があるんだ?」
リリアは一度かおるを見つめ、しばらく黙ってから答える。
「あなたの力は、今後この世界の運命に大きな影響を与える。だから、私はあなたを守るために…そして、あなたの力を引き出すために来た。」
その言葉に、かおるは深い疑念を抱く。守るため、引き出すため…一体、誰が何を目的として自分に接触してくるのか。リリアの言葉には何か裏があるように感じた。
だが、今はその謎を追い求めるよりも、目の前の危機を乗り越えることが先決だった。
「どうする?」リリアが冷静に尋ねる。
かおるはしばらく黙り込み、心の中で決断を下した。
「協力する。お前の言う通り、今はこの危機を乗り越えなければ。」
リリアは微笑み、再び戦闘態勢に入る。
「その覚悟があれば、きっとあなたなら乗り越えられる。さあ、行きましょう。」
かおるは深く息を吸い、再び戦闘に臨む。その背後には、リリアという新たな仲間がいる。そして、かおるは確信した。これは単なる試練ではない。今、彼に与えられた使命の一端が、ようやく明らかになりつつあるのだ。