第8章68【終焉の先に待つもの】
地面が震え、破裂音とともに再び現れたのは、先ほど倒した魔物の何倍もの大きさを誇る、さらに恐ろしい存在だった。その姿は、かおるがこれまでに見たことがないような恐怖を感じさせるものだった。
「こいつ、まさか…」
かおるはその巨大な魔物を見上げながら、言葉を漏らす。これまでの戦闘経験で鍛えられた視点でも、この魔物はただの魔物ではないと直感的に感じ取っていた。何か、違う。圧倒的な存在感と力を持つその魔物は、ただのモンスターではなく、何かもっと深い意味を持っているように思えた。
「かおる、あれは何だ!?」
セラがかおるの横に立ち、恐怖の表情を隠せない。かおるはその姿を見ながら、深呼吸を一つして答えた。
「わからない。だが、今はあいつを倒さなければならない。」
アリシアも静かに構えながら、二人に続いた。彼女もまた、すぐにでも戦闘に突入する覚悟を決めていた。
「準備はできたか?」かおるが二人に問う。
「もちろんよ。」セラが力強く答える。
「私も大丈夫です。」アリシアが静かに頷いた。
魔物はすでに、地面を揺らしながら迫ってきている。巨大な足音が、戦場を支配し、その圧力がかおるたちを押しつぶそうとしていた。
「行くぞ!」
かおるは最初に動き、瞬時に魔物に向かって飛び込んだ。彼の速さはまさに雷のようで、魔物の動きがわずかに遅れた瞬間を見逃さなかった。かおるは間髪入れずに魔物の足元を切りつけるが、その巨大な体躯に対して傷一つつけることはできなかった。
「くっ…!」
かおるは一瞬の隙をついて、素早く距離を取ると同時に、セラとアリシアも攻撃を加えるべく動き出す。
「セラ、左側!」
「了解!」
セラはかおるの指示を受けて、魔物の左側に回り込む。今度こそ、魔物を攻撃するチャンスだ。
セラの手に持っていた剣が煌めき、魔物の巨大な足を切りつける。その一撃は確かに魔物の体に浅い傷をつけるが、その反応は遅れることなく、魔物は逆にセラに向けてその巨大な爪を振り下ろす。
「危ない!」かおるがすぐさまセラを引き寄せ、爪の一撃を自分の体で受け止める。衝撃がかおるの体を激しく揺さぶるが、彼はその場でしっかりと踏ん張り、耐え抜く。
「大丈夫か?」かおるが息を整えながらセラに問う。
「大丈夫よ、ありがとう!」セラは少し息を切らしながらも、顔に笑顔を浮かべる。
アリシアはその隙に、魔物の顔を狙って魔法の矢を放つ。しかし、魔物の皮膚は魔法すらも弾き返すほどの硬さを持っており、矢はまったく通じない。
「くっ、やっぱり魔法は効かないか!」
アリシアは、魔物の動きに合わせて素早く位置を変えながら、次なる攻撃を準備する。
「次は私だ!」
セラが叫びながら再び攻撃に出る。その動きは、まさに一瞬であり、魔物の足を切り裂くことに成功した。しかし、巨大な魔物にとってその攻撃はただのかすり傷でしかなかった。
「どうしてこいつはこんなに強いんだ…?」
かおるは苛立ちを隠しきれずに呟く。それでも彼は一切引かず、さらに攻撃を繰り出す。
その時、魔物が吠え声を上げた。地面が再び震え、魔物はその体を反転させ、かおるたちに向かって猛烈な勢いで突進してきた。
「こっちに来るな!」「避けろ!」
かおるとセラは反応するも、魔物の勢いは想像以上に速く、そして強かった。かおるはセラを抱えて一瞬で距離を取ろうとするが、魔物の爪がその目の前を掠めた。セラが一瞬、動きを止める。
その瞬間、アリシアが咄嗟にかおるの目の前に立ち、かおるの腕を引っ張った。
「かおる、こっち!」
アリシアの判断が功を奏し、かおるはギリギリで魔物の攻撃を回避することができた。しかし、その衝撃で地面に倒れ込み、しばらく動けなくなる。
「くっ、もう少しだ……!」
かおるは必死で立ち上がり、再度戦闘に参加する。
その時、魔物の背後から、突如として異様な光が射し込んできた。かおるはその光に目を向けると、それが予想外の援軍であることに気づく。
その光の中から現れたのは、かおるが今までに見たことのない、まばゆい白銀の鎧を纏った人物だった。
その人物は、何も言わずに魔物に向かって走り出す。その姿はまるで戦神のようで、周囲の空気すらも支配しているようだった。
「来た……!」
かおるはその人物を見ながら、心の中で確信を持った。これが、最後の戦いの合図だと