第8章66【闇の中で咲く花】
かおるは冷静に息を整えながら、再び仮面の一団と対峙した。彼の目は鋭く、揺るぎない決意を宿している。それと同時に、彼の周囲には異様な空気が漂い始めていた。戦いの中での冷徹さと、戦場での直感が、今や完全に一体となっていた。
「お前たちの言う選択肢など、最初から考慮に入れていない」
かおるの言葉が重く響く。彼は一歩踏み込むと、仮面の者たちの間にひときわ冷たい空気が走る。
その時、再び仮面の男が声を発した。
「そうか……ならば仕方がない。だが、覚悟はできているのだろうな」
その言葉に続いて、仮面の者たちが一斉に動き出す。まるで一つの大きな生物のように、無数の手足が同時にかおるに迫り、彼の周囲に迫ってくる。
「うるさい……」
かおるは冷静に自分の足元を見つめ、すっと体を低く構える。瞬間、彼の体から放たれる力が周囲の空気を引き裂き、無数の仮面の者たちに向かって放たれた。
その力は、普通の人間が発するものとは一線を画す。まるで、暴風のような力が彼を中心に渦を巻きながら、仮面の一団を押し込んでいく。
しかし、仮面の者たちも一筋縄ではいかない。彼らは身のこなしが非常に早く、かおるの攻撃を巧みにかわしながら、それぞれの攻撃を放ってくる。
その中でも、かおるの目に一番強く映るのは、リーダー格と思われる仮面の男だった。
「お前……ただ者ではないな」
かおるは無言で頷くと、再びその男に向かって歩みを進める。その目は、まるで彼を消し去るような冷徹な輝きを放っていた。
「お前が一番の障害だ」
その言葉を皮切りに、かおるはリーダーに向かって一気に踏み込み、圧倒的なスピードでその間合いを縮める。
「やはり、この男が最も危険な存在……」
リーダーがそう呟きながら、無数の鋭い刃をかおるに向かって放つ。しかし、かおるはまるでそれを予知していたかのように、全ての攻撃を完璧にかわす。
「なかなかやるな」
かおるの目が僅かに笑みを浮かべる。それと同時に、彼は一気にリーダーに接近し、圧倒的な力でその胸を貫いた。
その一撃でリーダーは完全に動きを止め、地面に倒れる。周囲の仮面の者たちが驚愕の表情を浮かべ、呆然とする。
「お前がリーダーか……それとも、まだ背後にいるのか?」
かおるの言葉が静かな空気の中に響く。彼は無駄に言葉を費やすことなく、今一度、周囲を見渡す。
その時、アリシアが駆け寄ってきた。彼女は少し息を切らしながらも、かおるの前に立つ。
「かおる、大丈夫?」
「問題ない。だが、これで終わりではない」
かおるは周囲の気配を感じ取る。何かが足りない、何かが隠れている気配を感じる。
その瞬間、背後から急に不自然な風が吹き荒れ、かおるとアリシアはすぐに反応する。
「なんだ……!?」
かおるは体をひねり、その風の方向を見つめる。
「まだ……終わっていないのか」
その言葉とともに、突然、地面が揺れ動き、地面から巨大な魔物が姿を現す。体は黒く、目は赤く輝いている。まるで一つの巨大な塊のような魔物だ。
「なんだこれは……!」
アリシアが驚きの声を上げる。しかし、かおるはその魔物を見ても、焦ることなく冷静に足元を固めた。
「どうやら、最後のカードか……」
かおるは立ち上がり、その巨大な魔物に向かって一歩踏み込んだ。