第6章59【誓いの刃】
次の話で新章突入です!
ヒスイの葬儀は、静かに、しかし重苦しく執り行われた。
王都のはずれ、小さな丘に建てられた墓標には、かおるの手で刻まれた言葉があった。
《彼は正義だった。俺たちは、それを守れなかった》
アリシアは黙ってその横に立ち、花を捧げる。セラも同様に、じっと目を閉じていた。
その空気の中で、かおるが口を開く。
「……ここで終わらせない」
誰に言うでもなく、だが強く。
「俺は……もう、黙ってるわけにはいかない。ジークの分も背負って、生きる。そして――この世界を終わらせる」
アリシアが、驚いたようにかおるを見る。
「“終わらせる”? どういう意味……?」
かおるは、静かに答える。
「“転生”も、“属性”も、“監視者”も……全部、元凶はこの世界の“法則”だ。なら、その法則ごと壊す」
その宣言に、風が吹いた。
その瞬間、セラがふと視線を逸らし、口元をかすかに歪めた。
「それが、できれば……ね」
◆ ◆ ◆
夜。
かおるは一人、剣を振るっていた。
魔法は使えない。だからこそ、**“物理”**での技術を鍛える。
――だがその姿を、アリシアが黙って見ていた。
「……本当に、変わったね」
「ん、何が?」
「前はさ、“バレたら即死”なんて言って、いつも逃げてた。けど今は……自分から戦おうとしてる」
「……怖いのは、変わってないよ。でも、逃げてばっかじゃ、誰も守れない」
アリシアはゆっくり近づいて、かおるの背中に寄り添った。
「なら、私も守って。……戦うだけじゃなくてさ。そばにいてよ」
かおるは驚いて振り返る。アリシアの瞳は、まっすぐに彼を見つめていた。
「ヒスイを失って、わかった。私も……かおるを失いたくない」
沈黙。
そして、かおるは――ゆっくりとアリシアの額に、自分の額を合わせた。
「……ありがとう。俺も、アリシアを守る」
夜風が優しく吹き抜ける。
それは、失われたものへの哀悼であり、これから始まる戦いへの覚悟でもあった。