表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『転生違法世界 〜俺、バレたら即死です〜』  作者: 甲斐悠人
第六章【記録戦争 -Record Conflict-】
60/139

第6章58【最初の犠牲】

昼下がりの王都。訓練所に響く鋼の音が、どこか不吉に空気を震わせていた。


 かおるは訓練に身が入らず、いつものようにアリシアに斬り伏せられていた。


 「また手を抜いてたでしょ、かおる」


 「……いや、本気だったんだけどな。全然勝てる気しない」


 アリシアは不満げに唇を尖らせたが、彼の目の奥にある“影”に気づいていた。


 「……昨日のこと、まだ気にしてるの?」


 「いや。むしろ……吹っ切れた。アヤのことも。俺の罪も。……これから全部、受け止めるって決めた」


 その瞬間、訓練場の門が音を立てて開いた。


 現れたのは――王都の北端に住むヒスイだった。


 彼の顔は蒼白で、額には血が滲んでいる。


 「村が……やられた。黒い霧に包まれて、みんな……!」


 「……何だって?」


 


◆ ◆ ◆


 


 すぐにかおるたちは現場へ急行した。


 北端の村――そこには、かつて人が住んでいた痕跡すらなかった。


 焼け落ちた家々。炭と化した大地。そして、中心にだけ残された奇妙な“印”。


 十字に切り裂かれた地面。そこから這い出るかのように、黒いモヤが漂っている。


 「これ……魔法の痕じゃない。もっと“禍々しい”何か……」


 アリシアが警戒を強める。


 ヒスイは、震える指で印を指した。


 「俺の妹が……あの中にいたんだ」


 その言葉を聞いたとき――


 印の中心から、**“人の形をした何か”**が、のそりと這い出してきた。


 白い仮面。黒い衣。無感情の目。


 「“黒属性個体”田中かおる。排除対象として認定。開始する」


 次の瞬間――


 その仮面の者は、ヒスイの腹を貫いていた。


 「あ……」


 血が、弧を描いて散った。


 「ヒスイ!!」


 


 かおるは無意識に、地を蹴っていた。


 右手が熱い。だが、何も発動しない。使えない。――魔法がない。


 だからこそ、剣だけで、殴るようにその仮面を斬り裂いた。


 「お前が……ッ!!」


 


 刃が弾かれ、かおるは地に倒れる。


 仮面の使徒は、冷たい目で告げた。


 「あなたは――“世界の害”です。いずれ、完全に排除されます」


 そう言い残し、闇の中に溶けて消えた。


 


◆ ◆ ◆


 


 かおるは、ヒスイの亡骸を抱えながら、ただ呆然と空を見上げていた。


 涙は出ない。ただ、腹の底が灼けるように熱かった。


 「……“敵”が、動き始めた」


 そのつぶやきに、セラとアリシアが黙ってうなずいた。


 静かに、物語は崩壊の序章へと進み出す――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あとがき: 読んでくださってる皆さまありがとうございます!書籍化目指して頑張るぞ!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ