第1章6【ギルドと眼鏡の少女】
6話です!みてね!
ラストリアの一角にある“自由ギルド連盟”──通称「自由ギルド」。
ここは国家とは関係なく、傭兵・冒険者・情報屋など、個人の力で生きる者たちが所属する。
「かおる、ギルドに登録しておいた方がいい。仕事も情報も、ここを通した方が動きやすいから」
そう言ったのはジークだった。
俺とアリシアは、彼に案内されてギルド本部に入った。
騒がしく、どこか酒場のような空気。だが、目の鋭い奴らが多い。
「へぇ、これが“転生者”くん? 意外と普通っぽい顔ね」
不意に声がした。
振り返ると、そこには知的そうな眼鏡の少女が立っていた。
黒髪ボブにスーツのような服装、だけどどこか茶目っ気のある笑み。
「紹介しよう。こいつはクロエ・リグニス。情報屋見習いで、俺の助手だ」
「助手? やだジーク、私は“相棒”って呼んでって言ってるでしょ?」
クロエは俺に近づくと、じろじろと観察してきた。
「で、名前は?」
「田中……いや、カオルです」
「ふふん、偽名ね。でもいいわ、“カオルくん”。いい匂いしそう」
ぐっと顔を寄せてきたクロエに、思わず俺は後ずさる。
……近い。距離感バグってるぞこの子。
「ちょ、クロエ、やめなさい。あんた、初対面の相手にそうやって──」
アリシアが間に割って入るようにして言った。
その顔が、ほんの少しだけ赤くなっているのがわかった。
「……ふぅん? なにその反応。もしかして、嫉妬?」
「はあ!? そんなんじゃない!」
クロエはくすくすと笑った。
その様子を見ながら、ジークがつぶやく。
「ま、こういうやつが一人ぐらい混ざってた方が、面白いだろ?」
俺は思う。
──この街、ほんとに気の抜ける暇がないな。
クロエの案内でギルドに登録したあと、ジークが封筒を手渡してきた。
「ちょうどいい。明日、物資護衛の依頼が来てる。街の外だが、実戦訓練にはうってつけだろ」
「街の外……」
「そこで“お前が使えるかどうか”、本当の意味で試される」
──いよいよ、本格的な戦いが始まる。