第6章51【裏切りの胎動】
毎日5話投稿といいましたが、ちょっともっといっぱい投稿したいので、きのままに毎日投稿します!下書きの残り話数は、あと、、12話ものこってるので!
朝が来た。
湿った空気を切り裂くように、森の奥深くに新たな気配が降り立った。
その名は、《リブラ・ノクス》。
違法者でも正規の者でもない、異端の掃除屋。
どちらの味方でもなく、ただ“均衡”のために動く処刑人。
「……標的、《記録外属性》カオル。発見次第、処理対象」
漆黒の外套を揺らし、無表情に呟くと、彼は森の中へと消えた。
一方――
「……で、なんで俺の寝袋に入ってるんだアリシア」
「違うの、あれは、その……! テントが小さくて!」
「嘘つけ、昨日お前のテント組み立てたの俺だぞ」
「だって、夢に……かおるが出てきて……それで……///」
かおるは頭を抱えた。
昨夜の告白とキスから、アリシアの距離感は一気にゼロになっていた。
「いいか? このままだと周りに絶対バレる。特にセラが――」
「……もう気づいてると思うよ?」
「マジでか」
実際、セラは既に一人、隊を離れていた。
誰にも告げず、姿を消したのだ。
「アリシア。お前、後悔してないのか?」
「なにを?」
「俺が“バレたら即死”の存在ってこと。もし関わったってだけで、命を狙われることになったら――」
「それでも一緒にいたいと思える相手が、ようやくできたの。迷う理由なんて、ない」
その瞬間――
耳をつんざく爆音が、森を切り裂いた。
火の粉と土煙が舞い上がり、地面が爆ぜる。
「伏せろ!」
かおるはアリシアを抱えて跳ねのけた。
数瞬後、彼らの立っていた場所が巨大な氷柱で貫かれる。
霧の中から現れた影。
全身黒に包まれ、左目に奇妙なレンズをつけた青年。
「標的、確認。接近を許可する」
「お前、何者だ……!」
「リブラ・ノクス。“中立の処刑人”。記録の均衡を保つために存在する、異端の裁定者」
その言葉に、アリシアの表情が曇る。
「聞いたことがある……。どの国にも所属しない、“世界から忘れられた制裁者”……!」
「逃げろアリシア。こいつは俺がやる」
「かおる――!」
霧が濃くなる。
戦いの予兆と共に、雷鳴が遠くで鳴り始めた。
そして、その裏で。
セラは、かおるの真実を知る者を“闇の法廷”から救い出していた。
「……君を助けたのは、ただの私情じゃない。彼の未来を守るためよ」
凍った瞳でそう言い残し、再び闇に溶けた。