第6章50【告白、そして決別】
ついに50話突入です!今度は、100話目指して頑張るぞ!
朝露に濡れた森の中。
焚き火の残り香がまだ空気に漂っている。
昨夜の戦闘の余韻が、静寂の中に重く沈んでいた。
かおるは、アリシアの隣に座っていた。
「……大丈夫か?」
そう声をかけると、アリシアは小さくうなずいた。
「うん。でも……怖かった」
「だろうな。相手は時間すら無視してくる奴だった」
「……でも、それより怖いのは、かおるがいなくなること」
その言葉に、かおるの指が止まる。
薪を組む手を止め、アリシアの方を見つめる。
「私ね……昔、騎士団にいたころ、全部壊したの。仲間も、信頼も、自分の“価値”も」
「……」
「だから、あなたと出会って、こんなふうに笑えるのが、嘘みたいで……」
アリシアが、そっとかおるの腕に手を伸ばした。
「好き。あなたが違法でも、バレたら即死でも……私にとっては、世界そのものなの」
かおるは一瞬だけ、呼吸を忘れた。
世界の真ん中で、自分が肯定される音がした。
「……俺もだ。逃げる理由があった。でも、今は守りたい。お前も、この世界も」
アリシアが笑う。
涙をこぼしながら、笑った。
「……じゃあ、私だけの違法者でいて?」
「約束する」
二人はそのまま、唇を重ねた。
静かで、熱くて、切実なキスだった。
――その頃、セラは森の外れにいた。
ひとり、焚き火を見つめながら、手紙を握っていた。
『私、あなたのことが――』
途中で破り捨てた。
そこに書くべき気持ちは、もう意味を持たない。
「……かおるには、アリシアがいる。私は……戦う」
振り返ったその目には、もう未練はなかった。
恋ではなく、誇りを選ぶ目だった。
「私は“剣”で在る。感情で揺らがない、“記録の外”の武器として」
セラの旅が始まる。
誰にも知られず、誰にも愛されず。
ただ、かおるの未来を守るためだけに――