第6章47【二人きりの夜、そして不意打ちの、、】
ノイズとの激戦から一夜明け、森の隠れ家はひどく静かだった。
セラは疲れからか熟睡していた。魔力ではない“記録の行使”は、彼女の心を削る。
「ふぅ……セラ、よく頑張ったな」
かおるはそっと毛布を掛けてやり、隣の部屋へ戻った。
そこで彼を待っていたのは――アリシアだった。
椅子に腰掛け、足を組んだままワインを片手にしている。
「……あら。ようやく来たわね、かおる」
「お前、昼間っから酒かよ」
「……バトルのあとは、こうでもしないと眠れないのよ」
アリシアは視線を逸らさず、ぐいっとグラスを傾けた。
かおるは苦笑して、目の前に腰を下ろす。
「さっきの戦い……悪かったな。お前まで巻き込んじまって」
「ふーん。私のこと、まだ“仲間”だと思ってるんだ?」
「……違うのか?」
「……そうね。もう“仲間”なんかじゃないわよ。
だって――」
アリシアは突然、身を乗り出した。
かおるの顎を指でつまみ、視線を絡める。
「私は、“君の女”になるつもりなんだから――」
「――っ!?」
唇が、かおるのものを奪った。
柔らかく、でも迷いのない、強引で濃密なキス。
拒む隙など、なかった。
「……これで、少しはわたしの気持ち、伝わった?」
目の前で微笑むアリシアは、いつもの冷静な戦士ではなかった。
頬が赤く染まり、視線が泳ぐ。
「お、お前……!」
「ダメ……だった?」
「……いや、嬉しいけど、いきなりすぎて……」
「なら、答えて。わたしと……どうなりたいの?」
「それは――」
返事を詰まらせるかおるに、アリシアはいたずらっぽく笑う。
「ま、急がなくてもいいわ。
でもそのうち、身体で……わからせるから」
「なっ……!」
「ふふ。顔真っ赤よ?」
かおるは完全にペースを乱されていた。
だが、その空気は悪くない。
セラに対する“守らなきゃいけない感情”と違い、アリシアは“正面から向き合う女性”。
彼の胸に、確かな“恋の温度”が宿り始めていた。
夜が更けていく中、二人は静かに寄り添いながら語り合った。
誰にも邪魔されない――ほんのひとときの、甘い夜。