第5章44【セラが目覚めるとき】
あと、もう少しで50話です!うおおお!頑張るぞ!
かおるとアリシアは、イグジスの変形形態に苦戦していた。
金属の咆哮とともに、空間を裂くような爪が振り下ろされる。
だが、かおるはそれを紙一重でかわし、アリシアは背後から正確に剣を突き刺した。
「手応えなし!? 装甲、固すぎッ!」
「それでも、止めなきゃならねぇんだよ……!」
かおるがイグジスの胸に拳を叩き込む。
だが、相手は無反動。
「破壊、不能。再警告。違法記録保持者、速やかに消去する」
「うるせぇってんだよ、クソ機械がッ!」
かおるが再び踏み込もうとしたその瞬間――
「やめて!!」
高い声が響いた。
振り返ると、セラが立ち上がっていた。
その瞳が淡い金色に輝いている。
「お兄ちゃん、もうやめて。あの人は、わたしが止める」
「……セラ?」
セラが小さく両手を組む。祈るような仕草とともに、空気が変わる。
それは“魔法”ではなかった。
でも――
「記録、アクセス……開始。
記録コード:RA-00-IRIS」
イグジスの動きが止まった。
「まさか……!」
アリシアが息を呑む。
「彼女、“記録の原典”だわ……!
この世界の最初の記録コード、それを持ってる……!」
セラの瞳がイグジスを見つめる。
「わたし、思い出したの。
最初に生まれたとき、世界を記録するために存在してたってこと」
「お前……違法どころか……“神の上書き”レベルじゃねぇか……!」
イグジスの目が赤から紫に変わる。
「記録順位変更。セラ=RA-00-IRISを上位存在と認定……再起動します」
イグジスがその場に膝をつき、停止した。
あまりにも静かな結末。
風が吹き抜け、かおるは小さく息を吐いた。
「……終わった、のか?」
「ええ。でも……これで、彼女の秘密が世界に知られれば、もっと強大な敵が動くわ」
アリシアはセラの肩に手を置いた。
「だから、私たちが守らなきゃ」
セラは微笑む。
「うん。わたし、お兄ちゃんとアリシアちゃんと、ずっと一緒にいたい」
その言葉に、かおるの胸が熱くなる。
だが、その一方で――
遠く、どこか別の場所で。
「……見つけたぞ、“原典”。」
仮面の少女が、不敵に笑っていた。