第5章43【記録執行官《イグジス》との邂逅】
今回の話は、バトルシーンを追加してみました!激アツバトルなので是非最後までみてみてください!
空間が崩れる。まるで鏡を砕いたように、現実の景色に亀裂が走る。
その中心から、漆黒のコートに身を包んだ男が現れた。
記録執行官。
違法記録の完全消去を使命とする“国家直属の暗殺記録装置”。
「……タナカ・カオル、記録番号099X-B。
違法者として、ここに処分対象と認定する」
イグジスの目は赤く光っていた。それは感情を持たない、ただの“抹消機械”。
「やれやれ……やっぱり来たか」
かおるは、後ろにいるアリシアとセラを守るように前に出る。
「逃げて」
「ふざけないで!」
アリシアは怒鳴った。
「私、もう逃げないって決めたの! だから、かおるの隣に立つ!」
「……強くなったな」
かおるが微笑んだ瞬間、イグジスが動いた。
その一撃は“音すら置き去り”にする斬撃。
刃がかおるを真っ二つにしようと迫る――
ギィィィン!
アリシアが剣を抜き、かおるを守るように弾き返した。
衝撃で吹き飛ばされながらも、彼女は立ち上がる。
「この程度で倒れる私じゃない!」
イグジスは無言のまま、両手を広げた。
空間が歪み、三本の光剣が生成される。
そのすべてがかおるたちを同時に狙ってくる。
「アリシア、左右を頼む!」
「了解ッ!」
かおるは真正面から斬撃を受け止めた。
肉体を強化しているわけでも、魔法を使っているわけでもない。
ただ“死なない”ためだけの動き。それが異常な反応速度を生み出していた。
背後では、セラが怯えながらも手を組んで祈るように見つめている。
「……お兄ちゃん、がんばって」
その声が、かおるの背を押す。
「俺には守りたいものがある。
それが、“違法”だって言うんなら――」
かおるは飛び込む。
「そんな世界ごと、ぶっ壊してやるよ!」
拳を握り、イグジスの顔面に叩き込む。
金属音のような打撃音が響き、イグジスの体が後ろに吹き飛ぶ。
――しかし、彼はすぐに立ち上がった。
「警告。対象は執行レベルを超えています。
補助ユニット、出力解放」
その瞬間、イグジスの体が変形した。
人型から“機械獣”のような姿に変わる。
「うわ……強化形態とか、出たよ……!」
アリシアが顔をひきつらせながらも構えを取る。
「でも、いいよ。だったらこっちも――」
彼女はちらりと、かおるの方を見る。
「背中、預けるからね。バカかおる」
「おう。そっちは任せた、“お姫様”」
戦いは、次の局面へ。
だが、二人の息は、誰よりもぴったりと合っていた――。