第5章40【開かれた記録、歪んだ真実】
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――パリン。
硬質なガラスが割れるような音と共に、かおるたちは目を覚ました。
「……ここは?」
あたり一面が白い。空も、床も、壁すらない。まるで記録の“原初の空間”に投げ出されたようだった。
「やっと、目を覚ましたか」
声がした。先ほどのローブの男ではない。
目の前に立っていたのは、白銀の装束を纏った少女。
長い銀髪に、瞳は色を持たない灰。手には“記録端末”と呼ばれる、古代の媒体を握っていた。
「……誰だ、お前」
「私の名はヴァイオレータ。
記録違反者、そして“監視官の処刑対象”よ」
かおるの顔が強ばった。
ヴァイオレータ――。伝説の“記録干渉能力者”。存在そのものが国家違反に近く、過去を改竄できる唯一の存在。
「……あの少女を、作ったのはお前か」
「いいえ。私は“彼女を消さなかった”だけ」
ヴァイオレータが手を振ると、空間に小さな窓が開き、クロエに似た少女が眠る姿が映し出された。
「記録から抹消された者は、存在しないものとして扱われる。だが時折――そう、“違法者”の近くにだけ、記録は形を取り戻すの」
「……俺が、彼女を“戻した”?」
「正確には、君の中にある“転生以前の記録”が彼女のデータと共鳴した。
それが“人格の残滓”として彼女を呼び戻した」
かおるは唇を噛みしめた。
自分のせいでクロエが“作られた”?
それとも、呼び戻してしまった?
「記録は、万能ではない。だが、抗い難い。
君がそれを理解するなら――この空間から、逃げなさい。
さもなければ……君は、君でいられなくなる」
ヴァイオレータが記録端末を振りかざした。
瞬間、かおるの視界が白く染まる。
アリシアが叫ぶ――。
「かおるっ!!」
その叫びを最後に、意識は、闇へと沈んだ。