第1章4【偽りの街ラストリア】
4話だよ!楽しんでみてね!
険しい山道を越えて二日。
俺とアリシアは、ようやく“ラストリア”の城門前へたどり着いた。
だが目の前の都市は、想像していたものとはまるで違っていた。
「……うわ。なんていうか、荒れてるな」
「表向きは“自由都市”だけど、実態は無法地帯に近い。転生者も多いけど、犯罪者も同じくらい多い」
街の入口では、簡単な身分審査が行われていた。
だがそれは、正式な国家ではなく“街のギルド”によるものだ。
「名前は?」
「……タカシとユミです」
「……はい通ってよし。怪しい荷物は?」
「ないです」
──あっさりと通された。
(こっちの世界、案外ガバいな……)
都市に入ると、空気が一変した。
露店、物売り、喧嘩、叫び声。人間の熱気と混沌に満ちていた。
ここは確かに、“法律の外側”の場所だ。
「とりあえず、隠れ家に行こう。私の知り合いがいる」
「知り合い? どんなやつだ?」
「……ちょっと口が悪いけど、有能よ」
アリシアに案内されたのは、都市の裏通りにあるボロアパートの一室。
扉をノックすると、中から声が返った。
「誰だァ? 朝からうるせぇぞクソ女」
「挨拶がわりにぶん殴るわよ、ジーク」
──ジーク。見た目は金髪ボサボサ頭の不良青年。
だがその目は鋭く、なによりただ者じゃない気配を放っていた。
「へぇ、そっちの男が“転生者”か」
「! おい、軽々しく……!」
「心配すんな。ここじゃそれが“商売”になる。なぁ、かおる」
「……なんで名前を知ってる」
「この街で生き延びるには、“噂”を先に掴むのが基本だ」
ジークの言葉に、背筋が寒くなる。
ここでは、名前も過去も──そして転生者であることすら、すぐに広がる。
「……情報を売られるってことか?」
「逆だよ。オレたちと組めば、“生き残れる”って話さ」
その瞬間、扉の外から爆発音が響いた。
「……おいおい。誰だよ、もう追っ手が来たのか?」
──まだ、戦いは終わっていなかった。