第4章36【記録の狭間、歪む影】【中編】
中編です!結構いっぱいかいたよー
記録塔の最深部、“虚無記録層”。
そこは、既に世界に存在しない言葉や、整合性を持たない出来事が、まるで“ごみ箱”のように積み上がった空間だった。
「うわ……これは……」
足元の床が、映像のように点滅している。断片的な記憶。声。時間。文字。
そのすべてが、統一されたルールを持たない“記録外の記録”。
「アリシア、絶対に俺の手を離すなよ。ここは、ひとりになると消されるかもしれない」
かおるはアリシアの手をしっかりと握った。
彼女は頷く。頬がわずかに赤くなっていた。
「……こうして手をつないでいるの、初めてだね」
緊張した場面にも関わらず、ぽつりと漏れたその言葉に、かおるはつい苦笑した。
「今、それ言う?」
「うん。言いたくなった。……私、君といるとき、怖い場所でも安心できるの。だから」
そのとき、再び周囲が歪んだ。
空間が音もなく弾け、ひとつの“記録”が具現化する。
かおるが見上げると、それは――自分が“転生”してきた、最初の瞬間だった。
列車事故。吹き飛ばされる身体。血と金属音。そして――
「やっぱり……これ、俺の“原点”か」
だがその映像には、あり得ないものが混ざっていた。
“誰かの手”が、事故の直前にかおるを“記録から引き出していた”のだ。
「なにこれ……。誰? この人――」
白い髪、黒衣の少女。
顔は見えない。けれど、かおるは“知っていた”。
「カガリ・ユキ……!」
名前を呟いた瞬間、空間が爆ぜた。