第4章34【嘘で守った真実】
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翌朝、かおるは“記録管理局”の地下室にいた。
目の前の古びた書架には、“生前記録”と呼ばれる分類タグが貼られている。
そこに、自分の名前が“なかった”。
「……やっぱり、俺の記録は“存在しない”んだな」
この世界に転生してから、どんなに調べても“本来の自分”に関する記録はない。
違法転生者である以上、それは当然のこと。
でも、最近になって奇妙な“矛盾”が一つだけ見つかっていた。
――自分の“存在を記録した者”の記録が、ある。
「カガリ・ユキ……“誰”だ?」
その名を記した記録帳には、こう記されていた。
> 【行為記録:転写】
【対象:カオル・シラサギ】
【理由:保護】
【認可:未承認(違法)】
「俺を……この世界に“記録”してくれた、唯一の人間……?」
その記録は、十年前のものだった。
つまり、かおるがこの世界に来る“前”に、すでに転写の用意がされていたことになる。
そこへ、アリシアが息を切らしてやってくる。
「かおる……! ジリアンが動いた! 王都の北区で、また記録の書き換えが――!」
かおるはすぐに記録帳を閉じ、アリシアに向き直る。
「行こう。もう“自分のこと”を追いかけてる暇はない」
「でも……それ、本当に大丈夫?」
「“嘘”でもいいんだ。今は――“お前との真実”を守りたい」
アリシアの目が、かすかに潤む。
「……かおる。そんなセリフずるすぎるよ……」
「もう一度言おうか?」
「言わなくていい!」
そう言ってアリシアは拳でかおるの胸を小突くが、
その頬はほんのり赤かった。
ふたりは駆け出す。
この世界の“嘘の記録”が、少しずつ崩れていく前に――