表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『転生違法世界 〜俺、バレたら即死です〜』  作者: 甲斐悠人
第四章【記録と嘘の図書館 編】
32/139

第4章32【記録の狭間、嘘つきの証明】

王都にある監視塔の上から、一人の少年が街を見下ろしていた。


 フードを深くかぶり、右手には古びた懐中時計。

 その文字盤には、数字の代わりに奇妙な“紋章”が刻まれている。


「……そろそろ、“奴”が動く頃か」


 彼の名は、ジリアン。

 “記録喰い”――違反者でも、記録者でもない、もう一つの存在。


 一方、かおるたちは王都の表通りを歩いていた。

 事件の余波も落ち着き、数日ぶりにアリシアと外を歩く時間が戻ってきていた。


「かおる、あそこの屋台……!」


 彼女が指さしたのは、焼き菓子の店だった。

 かおるは無言で手を引いて、屋台まで駆け出す。


「お前、甘いの好きだったっけ?」


「違うよ。君と、こうやって並んで食べるのが好きなの」


 どこか気恥ずかしそうに、アリシアは笑った。


 その瞬間――街の空気が、音もなく“止まった”。


「っ……今の、揺れ……?」


 かおるは直感で感じた。“あれ”は、ただの空間の歪みではない。


 次の瞬間、目の前の記録柱の一つが、空中で“書き換わった”。


【死亡記録:ユリア・ネーヴェ】

【原因:自死】

【目撃者:なし】


「ユリア……って、確か……議会の記録管理官……!」


 アリシアの表情が一気に強張る。


「でも、この記録……“嘘”だ。ユリアは、昨日まで元気だった」


 つまり――“誰か”が、意図的に【記録を書き換えている】。


「記録喰いが……動き出したのか?」


 かおるは胸元のペンダントを握る。


 これは、ライターを倒したときに残された唯一の痕跡。

 “記録を食う者”に、対抗できるただ一つの“鍵”。


「アリシア……今度は、もっとヤバいぞ」


 その言葉に、彼女も深くうなずいた。


「でも私は逃げない。君が嘘をついても、信じるって決めたから」


 かおるは一瞬だけ、顔をそらして笑った。


「……ずるいのは、そっちだよ」


 そして、ふたりは再び歩き出す。


 記録が改ざんされ、真実と嘘の境界が揺らぎ始める――

 “本当の敵”が、いま幕を開けようとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あとがき: 読んでくださってる皆さまありがとうございます!書籍化目指して頑張るぞ!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ