第1章3【ラストリアへの脱出】
3話です!感想書いてくれると嬉しいな(^^)
夜の森は、想像以上に静かだった。
俺とアリシアは、村の裏山を抜け、南の密林地帯を目指して進んでいた。
目指すのは“ラストリア”──転生者や犯罪者が密かに潜伏する、都市国家。
「……追ってくると思うか?」
「来る。あの国の“転生者狩り部隊”は、獲物を逃さない」
アリシアの言葉に、冷たい汗が流れた。
だが、森を抜けた瞬間──
「そこまでだ、転生者ども!」
闇の中に現れたのは、黒い鎧に身を包んだ兵士たち。
その先頭に立つのは、長いポニーテールの女兵士だった。
「……名乗ってやる。私はセリア・グレイン。帝国第七情報部隊、転生者処理課の隊長だ」
「処理課……って、冗談だろ……?」
「転生者は、国家の敵。あんたらがこの地にいる限り、私たちは“処理”する」
そう言って、彼女は鋭く剣を抜いた。
「アリシア、逃げるぞ!」
「無理。囲まれてる。……戦うしかない」
──最悪の選択肢。
だが、もう逃げ場はなかった。
俺は周囲を観察する。兵士は7人。全員が重装備、槍と剣を持っている。
(武器の重心、装備の隙間……再現記憶で見た動き、クセ、構えの弱点……)
──冷静に。冷静に、分析しろ。
「左の槍兵、構えが甘い。斜めから突っ込めば転倒する」
「了解」
俺が指示を出すと、アリシアは瞬時に動いた。
音もなく走り、指示通りに一人を倒す。
(俺の再現記憶と、アリシアの身体能力。組み合わせれば……)
戦況が少しずつ傾いていく。
兵士たちは混乱し始めていた。
だが──
「さすがに舐められすぎだな」
セリアが一歩、前に出た。
「ただの転生者じゃない。あんた、どんな力を使った?」
「使ってないさ。ただの勘だよ」
「……いい目をしてる。その目、処理するのが惜しいくらいだ」
セリアは一瞬で距離を詰めてきた。
鋭い剣撃。避けられない。
(来る──!)
だがその瞬間、アリシアが割って入った。
「ッ──!」
アリシアの剣がセリアの剣を受け止め、激しく火花が散る。
「……今は逃げる! ここで死なせない!」
「ちっ、今度会ったら“本気”で殺すよ、転生者──!」
アリシアが俺の腕を引いて、森の奥へ走り出す。
セリアの怒声が背後から聞こえる中、俺たちは暗闇へと消えていった。
「……田中かおる。君、本当は何者なの?」
「……ただの高校生さ。でも、生き残るためなら、なんでもやる」
そう言って、俺は遠くに見える街の灯を見た。
そこが、俺たちの次の目的地──ラストリア。