第3章23【転生者の里と、ふたりきりの朝】
評価とブックマーク追加ありがとうございます!これからも頑張ります!
雪混じりの風が吹く北方の村──“忘れられた里”。
かおるとアリシアは、ようやくその入り口にたどり着いた。
「ここが……転生者たちの隠れ里?」
廃村のような外観に反して、中では小さな暮らしが営まれていた。
そして、彼らを出迎えたのは――
「……ようこそ、よくぞ来てくれました。“先に来た転生者”として歓迎します」
そう告げたのは、眼鏡をかけた無表情な少女・イリナ。
異世界歴十年、かおるよりも遥かに先にこの世界に来たという。
「いずれ詳しく話します。ただ、まずは……少し休んでください」
客間に通されると、かおるとアリシアはひとつの布団しかない部屋に案内された。
「……なんで一つしかないの?」
「田舎だからな、部屋も布団も足りてないんだろ、たぶん……」
そう言いつつ、かおるはそっと布団の端を手で押さえた。
「で、でも、俺、床で寝るから!」
慌てて言うかおるに、アリシアが小さく笑った。
「ねえ、かおる」
「ん?」
「……私は、あなたの隣でもいいよ?」
「…………っ!」
その一言に、顔を真っ赤にするかおる。
アリシアはふわっと笑いながら、布団に入った。
「ほら、早く。明日からまた、世界を変える仕事があるんだから」
「……お、おう……」
いつの間にか、殺伐とした逃亡の日々の中に、小さな温もりが生まれていた。
そしてその夜、かおるは初めて穏やかな夢を見た。