第2章21【散る灯、残る意志】
森の奥で、かおるたちは追手を避けることに成功したかに思えた。だが、静寂は破られた。
――ズドン。
爆音と共に、森の中腹が吹き飛ぶ。王国直属の殲滅部隊が突入してきたのだ。
「くっ……やっぱり見つかったか!」
かおるが構える。しかし、その前に立ったのは、ボロボロになったの姿のセリアだった。
「……逃げて、かおる。今すぐ」
「何言ってんだ、セリア……!?」
「もう、私の身体じゃ、長くは持たないの。クロエが、あなたに渡した“転生記録”──それだけは守って」
セリアの身体には、深く刻まれた剣傷があった。
その直後、数歩後方で倒れる影。クロエだった。
彼女は、王国の“真理の記録庫”から盗み出したデータを、最後の力でかおるに託していた。
「かおる……あんたが、壊すんだよ。こんな腐った世界を……」
そして彼女は、笑って目を閉じた。
「クロエ……セリア……!」
怒りと悲しみで目を見開くかおる。その背後に、重厚な鎧の音が響く。
「……やはり、ここにいたか」
現れたのはジーク。かつての友であり、今や敵の筆頭。
「君が“異世界の者”であると証明された今、俺は……止めなければならない」
ジークは剣を抜いた。迷いはあった。だが、進むしかなかった。
激突する二人。
互角だった力の応酬は、ジークの一瞬の隙で終わった。
――刃が、かおるの脇腹をかすめる。
だが、同時にかおるの能力《再現記憶》が暴走し、時空が歪んだ。
「……これでいい。君は、生きろ。俺の分も、みんなの分も――!」
ジークは、暴走の中心に飛び込んだ。
その一瞬の献身が、かおるの暴走を止めた。
辺りは静まり返る。残されたのは、アリシアと、膝をつくかおるだけだった。
「……全部、俺のせいだ。だけど」
かおるの瞳に、今までにない“決意”が灯った。
「必ず、この世界の真実を暴いてやる。生きて、全部終わらせる」
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