第2章20【暴かれた力、交差する覚悟】
黒煙が町の北門を覆った。逃走の機を狙い、かおるとアリシアは裏通りを疾走する。
しかし、追手の気配は消えない。騎士団は完全に二人の位置を把握しているかのように、包囲網を狭めてきていた。
「……やっぱり、バレてる」
アリシアが剣に手をかける。その表情に迷いはない。
「俺が……何かの反応を引き寄せてる?」
かおるは胸に手を当てた。
記憶にない震えが走る。まるで、何かが“目覚めよう”としているような。
突如、頭の中で警告音のようなノイズが鳴った。
《《 再現記憶:制御不能領域へ突入 》》
世界が歪んだ。足元が崩れ、視界が逆巻く。
かおるの身体から、異質な光が漏れ出す。
「かおる、やめろ……!これ以上は、本当に“異物”にされるぞ!」
叫ぶアリシアに応える余裕はない。
このままでは、暴走する。だが、ここで捕まれば……“即死”だ。
彼は、選んだ。
自らの右手を胸に突き立て、能力の回路を遮断することで。
光が消え、視界が元に戻る。
追手が混乱する隙に、アリシアが手を引いた。
「……自分を殺してまで、生き延びるなんて」
「まだ死にたくないだけさ。アリシアと……一緒にいたいんだ」
ふたりは、再び闇の中を駆ける。
だがその背後では、王国の上層部に動きが出始めていた。