第2章15【彼女の正体と、封じられた力】
焚き火の灯りが、揺れていた。
あの襲撃から数時間。俺たちは森の中で仮拠点を組み、少女の話を聞いていた。
「……名前は、セリア。私は、“人間と同じように造られた存在”よ」
少女――セリアの言葉に、俺とクロエは黙って耳を傾けた。
「黒翼団の実験。感情と意思を持つ“戦闘用義体”。私はその試作個体の一人……だった」
「だった、ってことは……」
「逃げたのよ。私は“誰かを壊すために生まれた”のかもしれない。でも、それがイヤだった」
彼女の声は、まっすぐだった。だけど、どこかで“自分を許してない”音が混ざってた。
だから俺は、立ち上がって言った。
「だったら、俺と来い。お前は壊すために生まれたんじゃない。助けを求めたんだろ? それなら、今ここからが“お前の生き方”だ」
セリアは目を見開いた。しばらく黙って、震える声で言った。
「……ほんとに、そんなふうに……思ってくれるの?」
「ああ」
その瞬間だった。セリアは俺に一歩寄って――
「ごめん……ちょっとだけ、借りるね」
すっと、彼女の顔が近づいた。
そして――
ふわり、と唇が触れた。
「――っ!?」
不意打ちすぎて、反応できなかった。
「これ……私の中で、“ありがとう”って感情をどう表せばいいのか、よくわからなかったから。なんとなく、これが正しいって思って」
「ま、まってくれ!? それ、軽く爆弾すぎるって!」
その横でクロエが、微妙な笑みを浮かべていた。
「へぇ。これはこれは。カオルくん、モテ期到来じゃない」
「なんでお前が冷静なんだよ!」
こうして俺は、“人間じゃない少女”のキスを受け取った。
彼女を守る――その重さと、覚悟も一緒に。