第13章124【崩壊の始まり、散る絆】
結界の中、空気が張りつめていた。
「もう、戻れないんだな……ルーク」
かおるの声が、沈痛に響く。 だがその中には、怒りも悲しみもない。ただ、全てを終わらせるという強い決意だけがあった。
「戻る? 君はまだそんな幻想に縋っているのか。違うだろう? 僕らは、変えるために動いている。君が否定しようとしている世界を、僕たちは終わらせる」
ルークの言葉に呼応するように、エリシアの魔力が結晶化し、空中に陣形を描いた。
「来るよ!」
クレアの叫びと同時に、氷壁が形成され、敵の魔弾を弾く。 ルルの矢が、戦場を縫うように走った。
「こんなこと、あなたたちにして欲しくなかったのに!」
ルルの矢がルークの足元をかすめる。 その一瞬、表情に揺らぎが見えた。
「君たちは、何も知らない。僕たちが何を背負ってここにいるか……!」
ルークの魔力が炸裂し、光の奔流が広がる。アリシアがそれを剣で斬り裂き、かおるがその隙を突く。
「なら、教えてくれよ。お前たちの正義ってやつを!」
激突する拳と魔法。 戦場の中心で、かおるの感情が徐々に昂ぶっていく。
「……なんでだよ……どうして……」
拳が、ルークの腹部に直撃した。
「お前がそんなことを言うから……信じてた仲間が、どんどん壊れていくじゃねぇかよ!」
その叫びは、誰のためでもなく、自分自身への問いかけだった。
アリシアがエリシアの魔法を防ぎ、クレアが結界を強化し続ける。 だが、戦いは徐々に決着の色を見せはじめていた。
そして――ルークの魔力が急激に高まり、空間が震えた。
「ここで終わりにしよう、かおる」
「――ああ。終わらせてやるよ」
かおるの拳が、真っ直ぐにルークの胸元へと貫かれる。
爆発音。 魔力の波が周囲を飲み込み、白光が辺りを包む。
その中にいたのは、うずくまるルークと、剣を下ろしたアリシア。
「かおる……もう、終わったのよ」
仲間たちが、静かに見守る中。
かおるは力なく頷いた。
「……ああ。もう、これ以上……誰も失わなくていいんだよな?」
その問いに、誰もが答えを出せなかった。