第12章118【祭りの余韻、交わる視線】
最近投稿頻度が落ちてしまいました…。すみません。
夜の帳が降りる頃、収穫祭は一段と華やかさを増していた。 灯籠の淡い光が街を包み、人々は名残惜しそうに笑い声を交わしていた。
かおるは、アリシアと共に夜の出店を歩いていた。
「この焼きリンゴ、意外と美味しいわね」 「だろ?さっき子どもたちが並んでたから、気になってたんだ」
ふたりは肩を並べて、穏やかな時間を過ごす。
そのとき、ふいに背後から声がかかる。
「かおる様……でしょうか?」
振り返ると、ふたりの見知らぬ人物が立っていた。
一人は、黒髪に灰色のローブを纏った少女。柔らかな物腰に反して、瞳は鋭く何かを見透かしているようだった。 もう一人は、赤毛の青年。軽装の剣士風で、陽気な笑みを浮かべながらも、その背には一振りの長剣を背負っていた。
「突然失礼いたします。私、〈審問局〉所属のエリシア・ナインと申します。こちらは旅の護衛を務める――」 「ルークだよ。剣士ルーク・カナン。かおるさん、噂は聞いてるよ」
かおるとアリシアは、互いに顔を見合わせる。
「こんな穏やかな日に、何の用だ?」 「安心してください。今日はただ、ご挨拶だけを……。あなたに伝えるべき“兆し”があるのです」
エリシアは、ふっと微笑んだ。
「それは、やがて訪れる“第二の審判”の兆し……。ですが、今はまだ、祭りの余韻をお楽しみください」
そう言ってふたりは、群衆の中に静かに消えていった。
「……なに、それ」 アリシアが眉をひそめる。
「新しい厄介事かもしれない。けど、今夜は――」
かおるはアリシアの手をとって、灯籠が揺れる川沿いの道を歩き出した。
「……今夜くらい、世界より君を優先しても、いいよな」