第12章113【黒き雷鳴、叫ぶ魂】
すみません。投稿が遅れました。今日も5話ぐらい投稿します!お楽しみに!
世界が塗り替えられるようだった。かおるの魔力が暴走し、大気が裂け、周囲の木々が根こそぎ吹き飛ぶ。 かつてない異常なエネルギーが渦を巻き、まるで竜巻のように影たちを飲み込んでいく。
「な、なに……この魔力……!?」
影の一体が呻くように呻いた。だが、かおるはもう聞いていない。怒りと喪失に支配されたその目には、敵しか映っていなかった。
「お前たちを、生かしておく理由はない」
淡々としたその声が、逆に凄みを帯びていた。手をかざすと、紅黒の稲妻が天を貫き、真っ直ぐに影たちへと落ちる。
「黒雷陣・改——《審罪》」
地が裂けた。 空間がひしゃげるように震え、影の軍勢が一瞬にして蒸発する。
アリシアはその場に膝をついた。 「……かおる、あなた、もう……人の領域を……」
だが、かおるは応えない。ただ一体だけ、生き残っていた影へと歩み寄る。
「……教団の、幹部……アトラスの意志を継ぐ者……」 その影は、もはや半身を失いながらも、かおるを睨んでいた。
「我らの理想は……死では潰せん……いずれまた……」
かおるの手が、その胸を貫く。 「未来など、語る資格はない」
影は断末魔を上げることもなく、塵となって崩れた。
すべてが終わった。
そのはずだった。
アリシアが震える声で言う。 「かおる……帰ろう。死んだ人たちを、埋葬しなきゃ……」
だが、かおるは動かない。 その場に立ち尽くしたまま、空を見上げていた。
「……こんな世界で、俺はまだ、生きなきゃいけないのか」
呟きのような、独白。
アリシアは、黙って彼の手を握る。 「一人じゃない。あなたには、私がいる」
かおるの手が微かに震えた。 ようやく、僅かにその顔に人の色が戻る。
その夜。 火葬された人たちを見守りながら、二人は再び誓った。 ——もう誰も、失わないと。