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第12章111【裂ける空、忍び寄る叫び】
穏やかな日々が続くかに見えた翌朝、村の上空に、突如として異変が走った。
空が裂けるような轟音とともに、黒い亀裂が雲間に現れる。それはまるで、異世界への扉のように、禍々しい気配を放っていた。
「かおる、あれ……」
アリシアの声は震えていた。
「分かってる。俺たちは――終わったはずの“災厄”に、まだ巻き込まれてる」
その瞬間、地面がうねり、村の中心に巨大な魔法陣が浮かび上がる。かおるとアリシアが駆け寄ると、そこにはかつてアトラス教団と対峙した際に用いられていたものと酷似した紋様があった。
「まさか、まだ残党が……いや、これは違う……これはもっと原始的な、もっと古い……!」
村の長老・エルネストが慌てて駆けつける。
「かおる、これは“深淵の書”に記された禁忌の封印だ。まさか、この村の地下に……」
同時刻、村の西側の森では、謎の双子の少女が立っていた。
「姉さん……やっぱり、目覚めたね」
「うん。……かおる、アリシア、会える日が楽しみ」
新たなる戦いの幕が、音もなく上がろうとしていた。