第2章12【属性は才能じゃない。クセだ!】
スライム討伐の帰り道、ギルドに戻った俺たちは“訓練室”に呼ばれた。
「カオル。君の属性、まだ測定してなかったわね」
クロエが腕を組んで俺を見つめる。
「え? 属性って……この世界、魔法ないよな?」
「魔法はない。でも、人には“身体の傾向”や“戦い方の癖”がある。
それを“属性”って呼んでるのよ」
訓練室の中央には、大きな石板。触れると波紋のように光が広がる。
「これ、なんか占いっぽいな」
「ちょっと違うのは、“当たる”ってところよ。さあ、触って」
言われるがままに手を置いた瞬間――石板に、赤・銀・黒の三つの波紋が広がった。
「三属性……!?」
ジークが驚きの声を上げる。
「お、おお……俺、何かやっちゃいました?」
「……まあ、順に説明するわ」
クロエが淡々と口を開いた。
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◆ 田中カオルの属性
赤:瞬発型
→ 筋肉の瞬間的な出力が高く、初動の斬撃や踏み込みが速いタイプ
銀:分析型
→ 相手の動きや癖を直感的に読める。読み合いに強い
黒:特異型(分類不能)
→ 正体不明の属性。通常では現れない波形。過去に10人未満
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「君……なかなか面白い素材ね」
クロエがジト目になってつぶやく。
「おれ、“普通に生きたかった”だけなんだけど……?」
「“普通の人”は、黒属性なんて出ないわよ?」
なんだよ黒属性って。ちょっと響きかっこいいけど。
でも、ちょっと……怖い。
その日、俺はようやく知る。
“自分が何者なのか”を知るということは、
同時に、“どう戦うべきか”が見え始めることなんだと。
そして、ギルド長の口から、俺たちに新たな任務が告げられた。
「君たちに、地方村落の偵察任務を与える。……黒翼団の痕跡がある」
静かな戦いの幕が、再び上がる――!