第11章106【料理と勝負と、焦げた愛情】
「村の収穫祭、今年は“料理大会”をやるらしいわよ」 パン屋のおばちゃんから聞いたその話題に、村の広場がざわつき始めたのは、まさに昼下がりのことだった。
「料理……かあ」 かおるは腕を組み、難しい顔をする。
「ふふ、かおるは何か作れるの?」 アリシアが少し意地悪そうに笑う。
「うっ……簡単な炒め物なら……」 「それ、焦げてたやつでしょ」
クレアが眼鏡を押し上げながら言うと、みんなから笑いが起きた。
そんな中、ユーリが手を挙げて元気よく言った。 「よーし! みんなで出ようよ! チーム戦って聞いたし、きっと楽しいよ〜!」
「私、味見担当がいいな〜」と人間姿になったパフィー。 「いえ、私は実験……いえ、調理をやってみたいわ」 クレアもやる気満々だ。
そしてルルも、「が、頑張ります……!」と小さく拳を握る。
こうして──村の料理大会は、思わぬ熱気を帯びてスタートすることになる。
* * *
大会当日。 それぞれのチームが腕によりをかけた料理を用意する中──
「はい、こちら“アリシア特製・やさしさシチュー”です!」 「わ、優しさって……どこに入ってるんだ?」 「気持ちよ、気持ち」
一方のかおるチームは──
「こ、これ……本当に食べられるのか……?」 「ユーリさん、焦げてます、焦げてます!」 「い、いけるって! ほら、香ばしいの!」
村人たちが笑い声とともに料理を試食していく。
最後に、審査員の老人が満面の笑みで言った。 「どれも最高じゃった! だが、一番心が温かくなったのは──この“焦げた愛情カレー”じゃ!」
まさかの優勝に、かおるたちは爆笑し、アリシアは「えっ、こっちは優しさ詰めたのに!?」と悔しがる。
日が傾き始める。 祭りの余韻の中、みんなの笑顔が静かに広がっていく。