第10章97【裁きの業火】
アトラス教団、地下深くにそびえ立つ祭壇の間──そこに立つは、教団の頂点たる男『創神官ゼル=フォルス』。
「まさか、“仮面の異端者”がここまで辿り着くとはな……面白い。だが、それもここまでだ」
かおるは返事をしなかった。静かに剣を構え、殺意の籠もった一歩を踏み出す。
アリシアがそっと背を支える。「……かおる、戻ってきてね」
「……ああ、絶対に」
ゼル=フォルスの力は凄まじかった。時を歪め、空間を切断し、あらゆる因果を捻じ曲げる力。
だが、それでも。
「お前は俺の怒りには勝てない」
かおるは真紅の魔力をまとい、神速の剣撃を放つ。空間が裂け、世界が軋む中で、二人の戦いは次元を越えて続いた。
「……っ、なぜ貴様程度の存在が、これほどまでに──ッ!」
「全部失って、それでも守りたいものがある奴は、もう迷わねぇんだよ……!」
最後の一撃。かおるの剣が、ゼル=フォルスの胸を貫いた。
その瞬間、祭壇が崩れ、天より光が差し込む。
ゼル=フォルスは呆けた顔で呟いた。「……これが、運命の……反逆者……」
そして、崩れ落ちる。
長きにわたる戦いが、今終わった。
アリシアが走り寄り、かおるの手を握る。「おかえり……」
「ただいま」
そして、二人は──空を見上げた。