第10章89【失われた書庫への道】
次の話で、90話です!100話まで、あと10話です!頑張るぞ!
村を出発する朝、空はどこまでも澄み渡っていた。
かおるは荷物を背負い、村の門前で仲間たちを待っていた。アリシアが隣に立ち、セラは少し離れて腕を組んでいる。
「本当に行くのか?」セラが言う。「“失われた書庫”なんて、場所もあやふやなのに」
「それでも、行く価値がある。俺の力の秘密……そして、敵の狙いを突き止める手がかりがあるかもしれない」
セラはため息をついたが、それ以上反対はしなかった。
「やれやれ。面倒ごとに首突っ込むのが好きね、あんた」
「助けてくれるんだろ?」
「……言ってない。でも、放っておくと勝手に死にかねないし」
かおるとアリシアは小さく笑い、三人は静かに門をくぐった。
旅は順調に始まった。
だが、道中の森で彼らは異様な気配を感じ取る。
「……この感じ、魔力じゃない。もっと、こう……凍りつくような」
アリシアの指摘に、かおるは周囲を警戒する。
やがて、古びた石の祠のようなものが森の中に現れた。
「……あれは?」
セラが慎重に近づく。「魔除けだ。でも、何かがおかしい。力が逆流してる」
かおるが祠に手をかざした瞬間、視界が一瞬歪んだ。
「う……っ!?」
気づけば、彼らは森ではない異空間のような場所に立っていた。
空は灰色。浮遊する岩、逆巻く風、何より耳鳴りのような“囁き声”。
アリシアがかおるの手を取った。「これは幻覚じゃない。……空間ごと、歪められてる」
そのとき、声が響く。
『失われし記憶を求めし者よ。知恵と代償をもって試練に挑め』
石碑が浮かび上がる。そこに記された文字は――
「……転生法の原典?!」
唖然とする三人の前に、影が現れる。
それは一人の少女の姿をしていた。だが、その目は虚ろで、体からは不吉な瘴気が立ち昇っていた。
「誰だ……?」
少女は、無表情に呟いた。「“原型”を……返せ」
その瞬間、かおるの体の奥で、何かが共鳴した。
次の瞬間、激しい衝撃波が三人を襲った――!