第10章87【封じられた印】
ようやく投稿数が100エピソードになりました!
でも、まだ100話ではないので、100話目指して頑張るぞ!
異形の獣――黒炎を纏う三つ首の獣は、信じがたい速度で飛びかかってきた。
かおるは正面から受け止め、アリシアは獣の横腹へ斬りつける。だが、刃は表皮をかすめた程度で通らない。
「くっ……再生してる!?」
セラが叫ぶ。「あれ、通常の生命じゃない! 呪術で編まれた存在よ! 肉体は“印”で繋がれている……!」
「印?」かおるが叫ぶ。「どこだ、それは!」
「中央の頭、左目の奥……!」
アリシアが頷いた。「わかった。かおる、援護お願い!」
アリシアが身を低くし、風のように獣の懐へ潜り込む。かおるは正面から注意を引きつけるように剣を振るい続けた。
セラは支援魔法と毒煙を操り、獣の動きを封じる。彼女の手際は的確だった。
「今よ!」
アリシアの一撃が、中央の頭の左目を貫いた。
黒炎が弾け飛び、異形の獣は断末魔の咆哮を上げながら崩れ落ちた。
静寂。
エルリナは静かにそれを見届けていた。まるで、試すように。
「……なるほど、確かに"鍵"の片鱗を見たわ」
「まだやる気か?」かおるが剣を構える。
だがエルリナは首を振る。「今日はここまでよ。また会いましょう、偽りなき者たち」
黒炎に包まれ、彼女の姿は消えた。
残された静けさの中、アリシアがかおるの腕を取り、そっと顔を寄せる。
「……無事で、よかった」
「アリシア……」
二人の間に言葉はなかったが、確かな想いが通い合った。
セラは少し離れた場所で、それを見て、小さく息を吐いた。
「やれやれ……あいつ、昔よりずいぶん素直になったじゃない」
村には再び日が昇り、長い一夜が明けていった。