第1章1【この世界、転生は禁止です】
視界が真っ白だった。
何かにぶつかる音、車のクラクション、叫び声──そのすべてが遠ざかっていく。
そして次に目を開けた時、俺は知らない天井を見ていた。
「……は?」
目の前には木製の天井と石造りの壁。服も寝具も、どこか中世っぽい。
まるでゲームの世界だ。
──転生。
ゲームや小説で何度も見たパターン。俺、田中カオル(17)は、まさにその真っ只中にいた。
俺はゆっくりと体を起こし、自分の手を見た。
どこも痛くない。むしろ軽い。肉体年齢も元と変わらないようだ。
その時、ドアがノックされ、小柄な老婆が入ってきた。
「気がついたようじゃな。大丈夫かの?」
「ええと……ここは……?」
「この村は『フィゼル』。お主は近くの森で倒れておったんじゃ。服も奇妙じゃったし……まあ、命があってよかったわい」
俺はとっさに言った。
「えっと……記憶が、ないんです。自分の名前も、どこから来たかも」
老婆は心配そうに眉をひそめたが、すぐにうなずいた。
「そうかい。なら、しばらくここで休んでいくといい。名前は……そうじゃな、適当に呼ばせてもらうかの。そうじゃな、リクとか」
──助かった。
転生者と知られたら、下手したら変な実験台だの、隔離だの、あるかもしれない。
この時点では、俺はまだ甘かった。
この世界では「転生者」は──法律で禁止された存在だなんて、思ってもいなかった。
その日の夜。
村の集会所で、小さな集まりが開かれていた。村人たちは俺のことを遠巻きに見ている。
「名をリクというそうだ」「記憶喪失らしいぞ」「でも……服装が妙だ」
誰かがつぶやいた。
「まさか、“転生者”じゃ……ないよな?」
その瞬間、空気が凍った。
──転生者?バレたか!? いや、まだ何も言ってないはず!
「あ、あの……それ、なんですか?」
とっさに聞き返す俺に、村の男が言った。
「この国ではな。異世界から来た“転生者”って奴らが、昔、大きな戦争を起こしたんだ。だから今では、見つけ次第、王国が処刑する」
「……へえ。こわいですね」
なんとか笑ってみせたが、全身から冷や汗が噴き出した。
つまり、この世界では「転生者=違法」だ。
日本じゃチートで無双とか言われてたけど、ここじゃ即アウト。
「……明日から村の仕事を手伝ってもらおう。ちゃんと働いてくれりゃ、変な疑いも晴れるからな」
村長らしき男がそう言って、会は終わった。
──とにかく、目立たないように過ごさなきゃ。
魔法もステータスも、使えたとしても封印だ。
ここじゃ「普通」でいることが、生き延びる唯一の手段。
だがその夜、俺の寝ていた小屋の扉がノックされた。
「……入るわよ」
入ってきたのは、銀髪で無表情な少女。
この村で見かけたことはない。
「あなた、“転生者”でしょ」
その言葉に、俺の心臓は止まりかけた。
──な、なんでバレた!? いや、俺は何も……
「安心して。私はあなたの味方。私も……“転生者”だから」
……は?
こうして俺は、この異常な世界で、ただの逃亡生活じゃなく──
転生者同士の地下戦争に巻き込まれていくことになる。
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