第6話 4年生
ちょっと長め、よろしくです。
1月、俺は9歳になり、4年生になった。姉も向こうで6年生に、そして弟も無事に1年生になった。3組477位らしい。
え、俺たちの中で俺が一番格下なのか?これはまずいな。まぁ、異世界の創造神の加護が計算されてないからなぁ。
そして、5年生に上がれるかどうかの瀬戸際でもある。
同級生は800人を下回り、クラスは4組編成に。おれは4組698位として4年生生活をスタートさせた。
5年生になるには800名、計算上は全員なれるのだが、他校で5年生になれなかった者が受験し、その枠を奪う。
結果この学校の4年生が5年生になれるのは500位より上じゃないと厳しいとの事。
今の俺が500位より上になるには全てのランキング戦に挑戦し、全勝するしかなさそうである。
しかし、ダルいので前期は期末のランキング戦のみ参加した。杖で一閃、それで終わった。序列681位。
同組の奴にもなんで月に1度参加しないかって聞かれたけど、だってダルいんだよ。
転生しそれなりに力あってもダルいものはダルい。そこそこ頑張ればいいんだ、そう思ってる。
前期終了後、弟は実家に帰省したが俺は学校に残り、鍛錬に勤しんだ。
ん?鍛錬はダルくないかって?それはあれだよ、コスパだよ。
日々少しは頑張らないといざというときに困る。特に魔族は弱肉強食が基本だからな。
しんどさと得られる強さを天秤にかけているのだよ。
しかし、いろんな人に言われるが4年生卒だと碌な仕事がないらしい。
手に職を持っているか、闇社会に堕ちるか、漁船や炭鉱で長期のハードワークか、軍役についてて使い捨てで地上攻略の最前線の一番槍、とか?
しかし、5年生になるチャンスがまだある。中期からランキング戦に参加しまくるのもありだが、同期の同組の奴とは戦いたくない思いはあるのであまりしたくない。
別の手段、となると命がけになるのかな?
その別の手段とは志願者による果し合いである。
闘技場にて主に決闘によるものと服役者との戦いによるものがある。
魔族にも服役中の者がいるし、人間や竜種もいる。
その者が命と刑期短縮をかけて城下町のはずれにある闘技場にて1対1で戦う。
事前申請した武器なら何を使っても構わない。
制限時間は10分。
ルールはそれだけであった。
7歳以上なら親の許可なしに観戦と参戦の申請可、武器選定の参考になればと何度か見に行った記憶がある。
それにこの参戦は学生の昇級にも結構プラス評価になると先生も言ってたが命の保証はないと言ってたな。
同組の奴との戦いも嫌になってきたし、魔族である以上命がけの戦いの経験は避けられないと思ったので参加することにした。
4月某日、試合の2日前に闘技場に来た。俺をはじめとした参加者が集まっていた。
エントリーした犯罪者側の情報の説明があった。
1試合目 vsバルタン
戦闘力D 使用武器:鋼の剣
参加可能戦闘力E~D+
2試合目 vsキュリリン
戦闘力E+ 使用武器:鉄の爪
参加可能戦闘力E~D
・・・
こんな感じで全20試合、相手の名前、戦闘力、使用武器、参加可能戦闘力があった。
1試合目から順に参加者を決めていく。試合の希望者が複数いれば抽選、いなければ該当戦闘力者の中で未決定者の中から抽選、それでも決まらなければ次回の開催に持ち越す。
こんな感じであった。
抽選の結果、俺は16試合目であった。
16試合目 vsコースケ・ウメザワ
戦闘力D 使用武器:金属バット
う~む、人間か。名前からして転生者、いや転移者の可能性もあるのか?
まずいのは相手の方が実力が上の可能性大ってところか。
悩んでいても仕方ないので城下町の役所に行ってコースケ・ウメザワのことを調べてみた。
コースケ・ウメザワ
戦闘力D
自分はニホンジンと謎の言葉を発する推定15~20歳の人間。
人間たち3人が地上の鉱山付近にて魔族狩りをしていたので抗戦。2人は惨殺、残った1人は地上攻略部隊が捕縛されたもの也。その後、ミランゴ城下町の刑務所へ。
懲役50年。服役2ヶ月目の時、減刑のため闘技者として参戦へ。
多分、日本からの転移者だな、こいつ。
試合が決まった時は人間をヤるのは気が引けてたが、こいつも俺の同胞をヤってるし、気にしないでおこう、そう思うことにした。
2日後、俺は闘技場に来ていた。既に第1試合が始まっていた。俺の出番までまだまだ時間がある。観戦したり、昼食したり、アップしたりして
気付けば控室に案内されていた。
試合のたびに医務室へ運ばれる敗北した闘技者。勝者の方も重傷者多数か。
そして試合開始の時間が近づいたので戦いのリングに案内された。
そして対戦相手のいるリングへ。アナウンスと歓声がうるさかったが既にいる対戦相手に集中していた。
「・・・なんだ?俺の相手は魔族でもガキか。こんな奴相手で10年減刑か。ボロいな。・・・おい、くそガキ、さっさとママのところへ帰りな!」
・・・は?お前初対面なのにずいぶんと傲慢な野郎だな、・・・絶対〇す!
俺は無言で睨みつけてやった。
「ふん、言葉も碌にしゃべれんオコチャマだったのか?これはラッキーだったな。おいクソ審判、さっさと始めろ。こんな茶番、さっさと終わらせてやるわ。」
茶番、か。なめられたものだ。では、戦いとは、果し合いとは何か、教えてやるとしよう。
こうして試合は始まった。
バットを剣みたいに構えるコースケ。俺はコースケの実力を測るため距離を取り杖の先端を向け、発砲。
コースケは避けた。弾丸は闘技場の壁に煙をあげながらめり込んでいった。
続けて発射したが避けたり、バットで叩き落したりしていた。
うーん、日本からの転移者の割に実戦を積んでそうだな。そう思ってると今度は向こうから距離を詰めできた。
今度は接近戦か。今度は杖として応戦か。しかし、競り合うこともなく打ち負けました。
やはり体格差でコースケの攻撃の方が俺の攻撃より強いから俺が弾き飛ばされる。
そしてまた距離ができたので俺は杖の先端を構え、発砲。
コースケは弾丸のコースを読み切り顔面付近の高さの弾丸を野球のバッティングの要領ではじき返し観客席へホームラン。あいつ悪球打ち上手いな。
今度はピッチャー返しだとかいってるが気にせず発砲。
再び弾丸のコースを読み今度は俺の右ほほをかすめるように弾丸が返ってきた。
コースケは勝利を確信したのか笑ってる。
弾丸は通用せず接近戦はコースケが優勢。
確かに笑えるかもだがまだ勝負はついてない。
もう1度、発砲した。
弾丸を読み切り、パッティングスタンスへ・・・、とはうまくいかずコースケの眉間に弾丸がヒット、そのまま貫通した。
な、なぜ・・・といいながら倒れ、起き上がれないコースケ。そのまま試合が終了した。
秘技、炎弾蓮華。同距離、同速度で弾丸を発射。1発目と2発目はわざと火炎を大きめにしての弾丸、最後のは火炎を圧縮して小さめの弾丸を放ち距離感を錯覚させ弾丸を命中させる技。
一見殺しの必殺技。
そしてコースケはそのまま医務室へ運ばれたのだった。
後日聞いた話だが、コースケは城下町の肉屋が買い取り、精肉され、それなりの値段で売れたとの事だった。
試合後、俺も医務室へ。
接近戦で肋骨が数本折れたようだ。奴のバットに当たったからな。無償で受けられる回復魔法で治ったが一応2~3日は安静してくださいと言われた。
その日は寮に帰還。数日間寮内で安静、病院に行っても異常はなかったので実家に帰った。怪我はなんともなかったが、あんなんでも人をヤったのだから精神的にも負担は来る。
父親や先生の体験談でも罪悪感はあったと言ってたから俺はしばらく家族の元まったりとした日々を送った。
そして5月、中期が始まった。そして例のごとく期末のみランキング戦に参加。勝利を飾った。序列673位。
長期休暇に入ったので実家に帰った。家族からどうするかと聞かれた。このままだと5年生にはなれないので、父親の斡旋で就職か、実家を出ていくか、他校を挑戦するか。
結論が出ないまま数日後、家の中に見慣れないおっさんが現れ、俺と両親とともにいた。この人は来年新設するイリヤ第4アカデミーの職員で、来年に俺を5年生として迎えたいとスカウトにきていた。
どうやらこの職員はあの闘技場にいて、俺の試合を見たらしい。(俺の家族はこのことについて連絡も報告も受けてません。)
その後、両親と姉から説教を受けたがイリヤ第4アカデミーの件は喜んでくれました。
9月、中期が始まった。そして例のごとく期末のみランキング戦に参加。勝利を飾った。序列662位。
長期休暇は実家に帰らずイリヤ第4アカデミーを視察したり調べたりしていた。それ以外は自己鍛錬していた。
そして4年生後期、つまりここでの最後の学期がはじまった。
そして期末がきてランキング戦に参加。これもあっさり勝利し序列645位になった。
こうして途中ながらムーア第6アカデミーを卒業、イリヤ第4アカデミーに入学した。
今回はそこそこ運が良かったので生き残り、大怪我などはない仕様になりました。
来週も投稿予定。