短編 はるひこの記録
◆3月21日
「ラボラトリー」に入って、6年目に入る初日だ。相も変わらずリーダーは人体実験を命じていた。今度は、失敗しないように願う。実験担当の者たちの双肩にかかってるが。
昼前に戦闘。無事に帰ることが出来た。そして、レストレイションの訓練も完璧に行えた。
今日は、無事に夜の就寝を迎えられるだろうか。
本日、レストレイション発動なし。明日のため、早めに就寝するとする。
◆3月22日
いい目覚めだった。しかし、その気分はすぐにかき消された。仲間の悲鳴が聞こえた。昨日の実験が失敗の方向に向かっているのだろうか。所詮無理だ。ハルバードの力を持った者にバックラーの力を注ぎ込むなど。しかし、耐えてくれ。生きろ。
残念だ。5名全員実験に失敗したとのこと。今回は、葬るのか。それとも、レストレイションを要望されるのか。
レストレイション発動決定。さらば、私の記憶よ。
◆3月23日
記録を読み込むために、昨晩から一睡もしていないが、日付は確実に変わっているため、ページを改める。
これで、何度目になるのか。記録にあるレストレイション発動をカウントしたかったが、膨大で途中で諦めた。
何度も書いてしまってることだが、レストレイション関連の記憶はあるというのに、前回レストレイション発動から今までの記憶がなくなるのは理屈はわかっているが納得がいかない。
レストレイションを発動すると、記録もレストレイションの事ばかりになる私の癖も治したいところだ。
それにしても眠い。しかし、30分後に戦闘の為の召集がある。準備をしなければ。
戦闘で、死者が出た。7名か。また、私の出番となってしまった。1日で記憶と別れを告げなければならないか。さらば、私の記憶。
◆3月24日
どうやら私は睡眠をとっていなかったようなので、きちんと睡眠をとらせてもらったが、記録を読む時間がない。
体に巣食う疲労が取れない。昨日の私がどんな事をしてここまで疲労をためたのかが実感としてない。
今日は何もなければいいが、リーダーが再度の実験をするとの命令を出した。数日前の記録を読むに、懲りないリーダーだ。
おそらく、私の記憶は、明日が期限だな。
怒らせてもらおうか。この記録をリーダーが検閲すると言い放った。リーダーは、自分の記憶を全て他人に晒しても差し支えない人のようだ。最近の記録しか読めていないが、リーダーへの批判ばかりの記録を読んだら、どうなるだろうな。
とりあえず、今日は、検閲もレストレイション発動もなく終わる。
◆3月25日
検閲は、いつになるかわからないが、1日が始まった。なるべく多くの記録を読めるよう、今日の無事を祈ろう。
しかし、実験が始まったようだ。おそらく失敗して、今日、もしくは明日までのレストレイション発動に相成るだろう。
遂に、検閲にこの記録が出される。無事に戻ることも願おう。
記録は、無事に戻って来た。だが、私への怒号が飛んだ。こんな組織に私がいる理由がわからなくなってきた。
夜になっても実験は終わらないようだ。明日、結果か。
◆3月26日
一晩寝て、決めた。「ラボラトリー」を抜けよう。しかし、どう抜けるか。
私というレストレイション持ちのメンバーがいるせいで、「ラボラトリー」は、命に対する敬意が全くない。私という存在が抜けることで、命に対する敬意を思い出せ。
今日は戦闘に出るそうだ。実験は続いているようだが。うまく行けば、「ラボラトリー」での私の最終戦闘になるだろう。抜けた後、違う所を探すか、それとも戦闘から足を洗うか。いや、おそらくこの記憶も明日にはない、明日以降の自分に判断は任せよう。
帰還。私は生きてるが、19名の死者。そして、実験で全員死亡。13名の犠牲か。合計32名を対象にレストレイション発動を命じられた。さらば、私の記憶。そして、「ラボラトリー」でレストレイションを発動するのはこれを最後にする。
◆レストレイション
「100匹とはいかないようだが、お相手を頼むよ。獣たちよ。」
◆3月27日
昨日の記録に任された判断だが、どこか組織を探すことにする。もしかしたら、こんな落ちた組織はここだけなのかもしれない。
夜の闇に紛れて脱走することに決めた。
そして、最初に行き当たった組織でレストレイションを隠した形で所属することにしよう。
偽りのユニーク・テクニックは、ブレイドとでも名付けようか。
おそらく、実験も戦闘も今日はないはず。ゆっくり記録を読みながら夜を迎えることにするか。
脱走、実行。自らの武運を願おう。




