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恋を捨てた皇后~国のため私がお妃様を探しましょう  作者: 酔夫人(旧:綴)
第1章

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バラ園で出会いました

「階段から転げ落ちたと聞いて驚いたぞ」

「ご心配をかけて申しわけありませんでした」


安堵した様子で深い溜め息を吐く目の前の男性。


鉄仮面の異名を持つ宰相ヴィクトール・ペトロフにこんな表情をさせられるのは()だからこそだろう。


それにしても、“転げ落ちた”とは?


あの石段でどう転げ落ちるのか……お父様の耳(宰相室)に届くまでに情報が大袈裟に脚色されたみたい。



「お前が謝る必要はない。謝罪すべきはあのクソガキだ」


お父様にとっては皇帝もクソガキなのね。




我がペトロフ侯爵家は建国の功臣の1人を祖先とする家門。


ロシャーナ帝国が建国したときからずっと皇帝を表から裏から支え続けてきたため、皇家の信頼はとても厚い。



ペトロフ侯爵家の現当主であるお父様は、先帝のドミトリー陛下とご親友同士。


口では「腐れ縁」と仰っていらっしゃるが我が家にきて愚痴る先帝陛下とその相手をするお父様との間には親しみしかなく、「仕方がない」という割にお父様の表情は決して嫌そうではなかった。


物心ついたときから身近にいたため、先帝陛下が“皇帝”という立場であることは分かっていても、幼い頃は私にとって他の親戚の小父さんとあまり違わなかった。



気分転換と愚痴を言いにきたのも本当だと思うけれど、先帝陛下が“ある目的”を持って我が家にきていたことを、私はあとになって知った。



ある日、ペトロフ侯爵邸に城から、陛下の御訪問を告げる使者がきた。


あまりに畏まっていて、いつもお忍びできているのにどうしたのかと、不思議に思ったことをまだ覚えている。


やがて、騎乗した近衛兵たちに隙なく守られてやってきた四頭立ての馬車がきて、皇族だけが乗ることが許されるその馬車から降りてきたのは先帝陛下と陛下だった。


兄のアレクサンドルは陛下と同じ年齢(とし)、すでに面識もあり二人は仲が良いようだったが、私はこのとき初めて陛下にお会いした。


そしてこの顔合わせは私と陛下のお見合いだった。



先帝陛下は国を大事になさる方だ。


親友の娘であっても、いや、親友の娘だからこそ色眼鏡を恐れ、私に后としての素質があるかを慎重に、何年もかけて見極めていらっしゃったのだろう。


そしてこの見合いのあと、恐らく陛下は私について好意的な言葉を述べられた。

だから私は陛下の婚約者として内定した。


婚約をするのかなんて、陛下に尋ねたことはなかったけれど、この日を境に陛下がお一人で我が家にくるようになったのだから、流石に分かる。


陛下もご存知だったと思う。


陛下はお兄様だけではなく私とも一緒の時を過ごすようになられ、私は陛下に憧れと淡い恋心を抱くようになった。


陛下は私の初恋だった。



私が12歳になったとき、お父様が私に陛下との婚約の覚悟を問うた。


正式に交付される前に、あの時点で9割は形が整っていたのだろうが、先帝陛下と同じく国のことを思いつつ私のことも大事に思ってくれたお父様は結婚の覚悟ではなく「将来この国の皇后となること」への覚悟を聞いてきた。


ペトロフの名に恥じぬよう国に尽くすのは当然で、その上で「陛下が私を望んでくれるならこれ以上の喜びはない」と答えた。


子どもの、おしゃまな意見。

でも本気だった。


覚悟を認めてくれたお父様は先帝陛下と話し合い、陛下から求婚される形で私が正式に婚約者となることで話が整った。



私は求婚される日を楽しみにしていた。



でもその日、陛下が求婚したのは私ではなかった。


花盛りのバラ園で、侯爵邸に遊びにきていた私の従姉ナターシャと陛下は出会い、先帝陛下とお父様、そして私がいる前でナターシャに求婚した。

・4000文字を超えたので、話を2つに分けました。


・短編ではニコライの婚約者は「カテリーナ」でしたが、「ナターシャ」に変更しました。

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