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先が無いことに、そろそろ気付いた方がいい

 はあ、退屈だわ。


 ずぅっと家で勉強か刺繍の練習ばかりなんだもの。飽きちゃったわ。


 ねえ、クロエ。ちょっとお出かけしても大丈夫よね?

 コラスの店で新作のケーキが発売されたらしいのよ。食べに行きたいわ。


 え、駄目?お父様に家から出すなと言われているって?

 ちょっとくらい、外出しても平気だってば。

 もう。お固いわねえクロエは。


 最近は家の中が暗くて、閉じこもっていたら身体が腐りそうよ。

 お父様は怒ってるし、お母様は愚痴ってばかりだし。エドガールお兄様もずっと暗い顔をしてるし。


 お兄様に買い物へ連れて行ってと頼んだら「一人で行け!」って怒鳴られたの。

 何かしら、あの態度!

 

 全部、あのブランシュのせいよ。

 以前は優しいお兄様だったのに、あの女のせいで変わってしまったのだわ。


 だいたい、最初から気に入らなかったのよ。

 貴族学院時代から美人で有名だったらしいけど、あんなの化粧が厚いだけじゃない。

 そう、あと服よ!いっつもデシャンの新作を着てるんだもの。服が綺麗だから、本人も美しく見えるだけじゃない?


 私だってデシャンのドレスが欲しかったのに、お母様が買ってくれなかったのよね。

 それなのに、これ見よがしに着てくるんだもの。ホント、生意気な女!



 私、お兄様やあの女と一緒に夜会へ出席したことがあるでしょう?

 マリウス様もいらっしゃると聞いて、お気に入りのドレスを着ていったのよ。

 ええ、そう。ラガルド侯爵家のマリウス様。


 だけどマリウス様は私が話しかけても全然相手してくれなくて、ブランシュにばかり話しかけるのよ。しかも何だか顔を赤らめてるの。

 失礼しちゃう!


 きっとあの女がマリウス様へ色目を使ったに違いないわ。お兄様という婚約者がいるのに!

 マリウス様もマリウス様よ。婚約者のいる女性へ親しげにするなんて……。幻滅したわ。

 

 え?いいのよ、もう。マリウス様なんて、こっちから願い下げよ。



 でね、腹が立ったから、あの女とお兄様が会う日に邪魔をしてやったの!

 収穫祭の日だったかしら。行きたいってワザと駄々をこねて。

 思った通り、お兄様は私の方を優先してくれたわ。ブランシュはさぞ悔しかったでしょうねえ。ふふふ。

 

 あとね、レオノール叔母様にブランシュのことを話したの。

 我が儘であばずれだって。

 え、嘘は良くない?嘘じゃないわ。ちょっと話を盛っただけよ。ちょっとだけ。


 叔母様はそんな女がエドガールちゃんの婚約者なんて!と憤慨なさってたわ。あの方、お兄様が大のお気に入りだものね。


 お茶会の日、ブランシュはレオノール叔母様に散々説教されていたわね。萎れたあの女の姿といったら!今思い出しても笑っちゃう。


 ええ?それでお兄様が婚約を解消されたのだろうって?


 そんなの、私のせいじゃないでしょ。二人の間のことだもの。

 私の知ったことじゃないわ。


 そりゃあ婚約解消なんて、外聞は悪いけど。我が家は由緒正しいヴィトリー伯爵家だし、お兄様は良い人だもの。すぐに新しい婚約者が見つかるわよ。


 ブランシュは馬鹿なことをしたものね。お兄様みたいな優良物件を逃すなんて。

 きっと、ロクな縁談が来ないわよ。

 そのうち、どっかの年寄りの後妻にでも嫁がされるんじゃないかしら。いい気味だわ。



 そうそう、縁談といえば……。


 同級生のマリリーズとオティリーは婚約が決まったらしいの。まあマリリーズは侯爵令嬢だから、爵位に群がる男が多いんだろうけど。オティリーなんて子爵家じゃない。

 あの子、見た目も地味だし。そんな女に先を越されるなんて、ちょっと腹が立つわ。

 

 私もいい加減、相手を決めないとね。

 こないだダロンド伯爵令息と顔合わせしたけど、なかなか婚約の申し込みが来ないのよ。

 

 何をモタモタしているのかしら。

 私みたいな美人、放っといたらすぐに新しい求婚が来るのに……。


 まあいいわ。それなら他の相手を探すだけだもの。

 他の令息からも釣書が来てるでしょう?


 え、来てない?一個も?

 

 嘘でしょう?何かの間違いで、届いてないだけじゃないかしら。

 一度、お父様に確認して貰わなきゃ。


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