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何をしてしまったのか、よく考えた方がいい

 あら、アペール伯爵夫人にミシリエ子爵夫人ではございませんの。

 ごきげんよう。お久しぶりですわね。


 そうそう、アペール伯爵の上のご令嬢、婚約が決まられたと伺いましたわ。

 おめでとうございます。


 お相手はラルエット侯爵家のご令息でしたわね。良いご縁で羨ましいですわあ。うちのオリビアは、なかなか婚約が決まらなくて……。


 は?エドガール?

 え、ええ。長男のエドガールは婚約しておりましたが、その、解消になりまして。

 別に問題があったわけじゃございませんの。そう、相性!お相手のご令嬢との相性がね、少ぅし合わなかっただけですわ。


 はい、お相手はクラヴェル家のブランシュ様で合っております。

 ご面識がおありでしたの?

 はあ、クラヴェル伯爵家の美人姉妹。そんなあだ名がありましたのね。知りませんでしたわ。


 今のお若い方はちょっと容姿の良い娘が居ると、すぐそんな風に騒ぎ立てるんですのね。私のような年嵩の者にはよく分かりませんわ。


 確かにブランシュ様も見目はよろしいですけれども……こんなことを言うのもなんですけど、彼女、かなり我が儘な性格でしたの。

 私もエドガールも、散々振り回されましたわ。


 息子はね、本当に家族思いの優しい性格なんですのよ。


 普通あのくらいの年齢になりますと、男の子は家族よりも友人付き合いの方を優先にしますでしょ?

 でも息子は、何よりも私たち家族を大切にしてくれますのよ。娘たちが出掛けるときは、いつも息子が付き添ってくれましてねえ。おかげで私も安心して送り出せますわ。


 あ、娘といっても姉のテレーズの方はもう嫁いでますの。息子もおりますのよ。

 リュッケという名なんですけど、これがもう可愛くてかわいくて。

 あらあら、申し訳ありません。私ったら、孫のこととなるとつい饒舌になってしまって。

 

 それでね、テレーズの婿は大変忙しいんですの。彼は宰相閣下の執務室に勤めてますのよ。いずれは側近になろうかとも言われておりますから、仕事が優先になっても仕方ございませんわ。


 だからエドガールは婿に代わって、姉や甥をとても慈しんでくれていますのよ。

 リュッケもまるで父親のようにエドガールへ懐いていますわ。


 それを、あのブランシュときたら。

 やれ自分が先約のはずだとか、甥がついてくるとは聞いてないとか。息子へ文句を言っていたようですの。


 いずれは我が家へ嫁ぐのだから、義姉や義妹と仲を深める必要はあるでしょうに。

 

 当初は気の弱そうな……いえ、大人しいご令嬢だと思っていましたのに。

 エドガールの思いやりも理解できない、身勝手な性格でしたわ。



 え?それにしても度が過ぎている、と?

 そうですか……まあ、家風はそれぞれでしょうから、ね。


 家風と言えばね、我が家でお茶会を開いた時のことですけど。ええ、当然息子の婚約者であるブランシュも呼びましたわ。


 お茶会といっても、近しい親族だけを集めたものですの。

 それなのに、あの娘ったら仰々しいドレスを着てきて。

 何やら話が違うって騒いでましたけれど。参加者がどういう人たちなのか、事前に確認しておかない自分が悪いのでしょうに。

 

 うちの大叔母は礼儀にすごく厳しい方でしてね。ブランシュを捕まえて一時間近く説教なさってましたわ。ふふっ。


 あの娘、最後は泣きながら帰っていきました。

 あの程度で泣くなんて、今どきの若い娘は本当に打たれ弱いですわね。


 私の若い頃は、義母にそれはもう厳しく躾けられましたわ。悔しい思いもしましたけれど、そのおかげでいっぱしの貴族夫人になれたと今では感謝しておりますのよ。



 あら、お二人ともどうなさいましたの?

 ええっ!?私どもにも非があると?


 そんな。あの娘は本当に我が儘だったのですのよ?

 以前、息子がドレスを贈ったのに、気に食わないと袖を通さなかったこともありますの。


 ブランシュは普段からどこそこの人気店の新作だとか言って、これみよがしに高価なドレスを着ていたのですよ。

 きっと、クラヴェル伯爵が甘やかしているのですわ。


 普通は婚家へ慮って、一段劣る服を着るべきでしょう?

 だからね、私が昔着ていたドレスにお直しをして、息子を通して渡しましたのよ。それを気に入らないって!なんて生意気なんでしょう。

 そうは思われません?


 それでもエドガールは我慢しておりましたのよ。

 それなのに、突然あちらから婚約解消を申し出てきましたの。信じられませんでしたわ。

 男の側からならともかく、女の側から婚約解消なんて。

 全く……クラヴェル伯爵夫妻は娘へどのような教育をしているのでしょうね!


 それでもね、優しい息子は彼女を見捨てなかったのですよ。

 婚約解消を撤回するべく説得しようとしたのですけれど、あちらのご家族に邪魔されたようです。

 息子は大変落ち込んでましてね。

 夫は諦めろと言うのですけれど、息子が可哀相で可哀相で……私、思い切って自らブランシュへ会いに行きましたの。

 

 そしたらね!あの娘、顔も出さないのよ。仮にも義理の母が来てやったというのに!


 私が抗議しましたらブランシュの姉のカロリーヌが出てきて、それはもう酷い言葉を投げつけてきましたのよ。

 嫁イビリをする性悪とか、子離れできてないとか。


 カロリーヌも確かに見目は良いですけど、あんなキツい性格では婿のなり手もないでしょうね。


 は?フォルジュ侯爵家?

 ええ、ブランシュもそんなようなことを言ってましたけど。きっと見栄を張って出まかせを言っているだけですわ。

 我がヴィトリー家ならともかく、クラヴェル家なんて先々代が伯爵になった成り上がりじゃありませんか。それが侯爵家と縁づくなんて、ねえ。有り得ませんわ。


 それよりも……アペール伯爵夫人の下のご令嬢、まだ婚約がお決まりになっていないのでしょう?

 よろしければうちのエドガールと如何でしょう?少し年は離れておりますけれど、アペール伯爵家のご令嬢でしたら申し分ございませんわ。

 

 あら、ほぼお決まりになった相手が……。

 残念ですけれども、仕方ございませんわね。

 

 でしたらミシリエ子爵夫人の娘さんは如何かしら?まだ特定のお相手はいらっしゃらないのでしょう?将来は我がヴィトリー家の当主夫人になるのですもの。ミシリエ子爵家にとっても、悪い話ではないと思いますわ。


 え?お断り?娘がブランシュ嬢のようにイビられては困る?

 あらいやだ。私、イビリなんてしてませんわよ。

 あれはブランシュが我が儘だったせいですわ。子爵夫人のところのお嬢様は、気立ての良いご令嬢とお聞きしますもの。あの女と違って。


 あら?お二人とも、どこへ行かれますの?

 ちょっと!まだ話は終わっていませんわよ!

 

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ババアどうしようもねぇなw
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