生産スキルが欲しかった
滝壺を後にして、一回ウロに戻る。
スピカが居なかったので採食をしながら南の草原に向かう。
途中で芽吹いた場所による。
キンギョソウのおねぇさんからメッセージを貰う。
『種も大きくなったので元気でね』とのお別れの挨拶だったので少ししょんぼりしてたら。
『種を埋めてほしい』とお願いされる。
キンギョソウが出した小さな光の粒が草むらに飛んでいくので追いかけていくと、大きなハナグモの死体が転がっていて、そこに光の粒が消えた。
「このクモは手伝ってくれていたハナグモ達のおかぁさんなのかなぁ、これと一緒に種を埋めればいいのかな」
うん、どうやら正解だったみたいで、キンギョソウと約束して丘を下っていく。
途中で木苺のような実がなっていたので食べてみたら、めちゃくちゃ酸っぱくて顔のパーツが中心に集まったような表情になった。
「スピカは食べられる実だけ教えてくれていたのかな」
根っこ通信で知っていた崖の近くにある草原に出て、イネ科の草を探す。
明るい黄土色に色づいている場所を見つけ近づいてみるとネコジャラシを大きくしたような草が穂を垂れていた。
取っていいか聞こうとしたら、返事がないただの屍のようだってやつで枯れ草になってた。
穂がついていない葉の部分を集めて紙撚りにしてみるといい感じで纏まる。
「確かこうやって二本の紙撚りを手のひらで作りながら捻るんだったっけ」
そちこち太さが違ってたまに撚れていない葉っぱが飛び出したりしている縄のようなものができた。
「ワタシって天才じゃね、生産スキルなくても出来るなんて…って、すみません昔の方々、ちょっと調子に乗ってました」
ひとりボケツッコミをしていたらスピカが崖の下から飛んできて、頭の上に止まって一鳴きし、近くの小さな花の蜜を吸って回りだした。
スピカを眺めながら縄を作り続けていてふと気づく。
「縄をつかって腰蓑みたいなの作る方が草鞋よりさきなのでは…」
ということで、出来ている縄を使って腰蓑を作り、葉っぱポンチョの丈を千切って短くした。
「断然動きやすい、早く気付けばよかったな」
再び縄をせっせと編み日が陰りだしたので帰り支度をする。
スピカが気づいて飛んでくると髪の毛に体を突っ込んで寝落ち。
「君がいないとワタシは困ってしまうね、独り立ちしないとね」
頭の上の住人に手を翳しながらウロへ戻ることにした。