ついに異世界らしく
さて転生に一応成功したようですが、問題が早くも発生。
「本当に裸一貫からやれとおっしゃる…まぁ柔毛があるのでほぼゆるキャラのキグルミなんだけどさ」
今のところアイテムもスキルもなし服もなし、少し途方に暮れそうになる。
そのような状況を察したのか、巨大な柏のような葉っぱが降ってきた。
『良ければどうぞ』
あちらのお客様からってやつ異世界でもあるんだ、素直に感謝。
脅されてしたがうようになったダンゴムシ部隊に真ん中に穴を開けてもらい、貫頭衣のように被ったらポンチョの出来上がり、スースーするけど。
「おぉ、なかなか、いけますね」
天上天下唯我独尊のポーズを取ってみる。
それがきっかけだったのかは定かではないけど、一瞬で丘全体に広がった魔法陣が現れると凄い勢いで折りたたまれ、指の先に集まって吸い込まれていく。
指先から流れ込んできた魔法陣の光は自分の体と心を優しく包むような温かい感覚をもたらす。
『恵まれた生涯を…』
誰が発したのかわからないメッセージを感じると光は消えた。
頭の上に何かが止まった感触、ハミングバードが何故か戻ってきたっぽい、なんでだろと思いつつ、指の先が失くなったんじゃないかと恐る恐る細目で確認、モザイクがかかるような感じになっていないので安心する。
「なんかみなぎってくる感じ、なんとか拳とか撃てるんじゃないかな」
足を肩幅に開いて丹田の前で両手を組む。
「波◯拳!」
腕を前に突き出すとお腹のあたりから体の中を何かが腕へと流れ、掌に魔法陣が現れる。
「やば、なにこれ!なにこれ!」
あからさまに攻撃力が高そうなエフェクトが発生しているので止めようとするが止まらない。
「み、みんな逃げて!この掌がっっ!うぐっっ!ごぉぁぁぁっ!」
「スピッスピッスピピピピッ」
ハミングバードが慌てたように自分の周りを飛び回っている。
もう片方の手で魔方陣が出ている手を抑える…一瞬音が全て消え去ると魔法陣が激しく光り世界が白に染まり…
…掌からチョロチョロと水が吹き出した、それはまるでジョウロで水やりでもしているかのような…。
ハミングバードは何もなかったように何処かへまた飛んでいった。
チョロ水が掛かったキンギョソウのお姉さまは近頃元気がなかったけど大喜び、『こっちにもー』『じゃぁ、つぎはこっちに!』『身共にもよろしく』なんか侍?混ざってない?安堵しつつ、先の邪気眼のような振る舞いにいたたまれなくなった。
「しょっぼっっ!あえて2回言う!しょっぼっっ!」