葉も生え揃い出し成長著しい若者の悩み
『こんにちわ、皆様お元気でしょうか、ワタシは本葉も数枚出てきて元気です』
なんでだろう、一人でいると独り言が多くなるのは。
さて、ダンゴムシに襲われそうになった日から数日たった今、本葉が3枚出てきて背もちょっと伸びました。
なんでだろう、人間だった頃より成長を実感しているのは。
まぁ今のワタシは日毎に背が伸びるし葉も出るからね、しかたない。
昨今の悩みは、なぜここに転生したのか?という一点にのみ集中しております。
それ以外の喫緊の悩みは植物仲間のおかげでほぼ解消。
ダンゴムシの襲撃を撃退したのをきっかけに、周りの植物仲間との連携が取れるようになりました。
あの光の粒みたいなヤツはフェロモンのようなもので、感情を変えて放出することでこちらの意図が伝えられることがわかった。
ダンゴムシ撃退の後に感謝の踊りを踊ったらまた光の粒が出て、それが助けた植物たちにまた吸い込まれると、植物たちもかなり弱いけど光の粒を発したので、ワタシがよいしょっと吸い込むと『どういたしまして』という気持ちが伝わってきた。
病院のテレビで見た国営放送の教育番組に感謝しないといけないね、科学をする心、伝わったよ、伝わったのは異世界だけど。
ほぼすることがなくて暇だったので、寄生虫が仲間に近づくたびに警告の光の粒を出してはディフェンスするというゲームを一日数回繰り返していた。
彼らは自分より目が良くなくて虫を見つけるのが難しく、見つけられても反応が遅くて手遅れになってしまうようだ。
そのうち周りの植物たちが光が差し込むように葉を除けてくれたり、強い雨のときは葉を差し出したりしてくれるようになった。
また根っこに根を絡ませて土の中の虫やら細菌やらから守ってくれたり、良い根粒菌のおすそ分けとかしてもらった。
これって植物あるあるってやつなのかな。
例の鳥は夜になると近くの低木の葉の上で「スピーースピーー」とイビキをかいて寝ている。
どうやらハミングバードのような生態の鳥みたいで起きている間はずっと飛び回ってあっちこっちで花の蜜を吸っている。
『寝てるときだけはゆっくりできるのかなぁ、生きるってのは大変だね、あの時、助けてくれなかったんじゃなくて、助けられなかったんだね君は…ありがとう』
そんなこんなで2週間、どうやらワタシは一年草のアブラナ系っぽい草であることが判明、多分この星の一年が12ヶ月なら余命8ヶ月なのかと絶望する。
まぁ、あの日、自分が死んだのならおまけの草生を楽しめたと納得しようじゃないかと…う~ん、したくないかな。
なぜ転生したんだろうね?